通電火災は、地震や風水害などで停電が発生したあと、電気が復旧した際に損傷した配線や電化製品から火災が発生する現象です。実際に多くの被災地で発生しており、復旧後に思わぬ二次被害を引き起こすことがあります。
通電火災を防ぐには、停電中に電気器具のコンセントを抜いたりブレーカーを落としたりすることが大切です。家具類の固定も効果的で再通電した際に可燃物が家電製品と触れるのを防げます。根本からの対策として感震ブレーカーの設置などもあるため、一度通電火災に対しての備えを見直しておきましょう。
この記事では、通電火災の発生原因や4つの対策について解説します。さらに、被災者アンケートをもとに、電気関連で困ったことや後悔した声もお伝えします。災害への備えを見直したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

- 通電火災とは?
- 【図解つき】通電火災発生の原因と危険なポイント
- 地震発生時
- 風水害発生時
- 通電火災を防ぐには?4つの対策を紹介
- 1. 電気器具のコンセントを抜く
- 2. ブレーカーを落とす
- 3. 家具類を固定する
- 4. 感震ブレーカーを設置する
- 【アンケート1】大地震発生時に電気関連で本当に困ったこと
- 困ったこと1. 計画停電・長期間の停電が生じた
- 困ったこと2. 電化製品が使えなくなった
- 【アンケート2】大地震発生時に電気関連で後悔したこと
- 1. モバイルバッテリーを日頃から充電しておけばよかった
- 2. 電気が使えなくなっても問題ないように対策する
- 3. 発電機や蓄電池を用意しておけばよかった
- 通電火災に関するよくある質問
- 感震ブレーカーの設置方法は?
- オール電化住宅でも通電火災のリスクはある?
- 通電火災への対策をして、安全な暮らしを守ろう!
通電火災とは?

通電火災とは、地震や台風などの災害による停電から電気が復旧した際に発生する火災のことです。実際に、過去の大規模災害でも多く発生しています。
1995年の阪神淡路大震災では、地震火災139件のうち電気火災が85件と、火災全体の約6割を占めました。2011年の東日本大震災でも、108件の地震火災のうち約5割にあたる58件が電気火災でした(※)。通電火災は災害時の二次被害として注意が必要な火災のひとつです。
※出典:総務省消防庁|地震火災対策等に関する消防庁における取組
【図解つき】通電火災発生の原因と危険なポイント

通電火災は、地震や風水害などの災害時に注意が必要です。ここでは、通電火災発生の原因と危険なポイントをわかりやすく解説します。
地震発生時
地震発生時の通電火災は、損傷した配線や電化製品に再通電することで発熱・発火するのが主な原因です。特に電熱器具を使用中に地震が発生すると、ヒーター部分に可燃物が倒れかかる可能性があり、気づかずに避難すると危険です。
停電が復旧した際にヒーターが作動し、接触した可燃物が着火する可能性があります。
風水害発生時
風水害発生時の通電火災は、浸水や雨漏りによる電化製品の損傷が原因であり、再通電時にショートして発火するリスクがあります。
また、コンセント周りに水分が付着していると、再通電した際にトラッキング現象が起こり、火災につながります。特に、床上浸水が発生した住宅では、見えない内部での水濡れに注意が必要です。
通電火災を防ぐには?4つの対策を紹介
通電火災を防ぐには、日頃の備えと災害時に適切な行動をとることが大切です。ここでは、すぐに実践できる通電火災を防ぐ4つのポイントを紹介します。ぜひ、今のうちにできることから備えておきましょう。
1. 電気器具のコンセントを抜く
通電火災を防ぐには、停電中に電気器具の電源を切り、必ずコンセントからプラグを抜いておきましょう。停電が復旧した際に、破損した電化製品や配線から発火する可能性があります。特に、家屋が損傷している場合は、配線が傷ついていることも少なくありません。
復旧後は器具やコードの状態をよく確認し、異常を見つけたらすぐにブレーカーを落として使用をやめましょう。小さな心がけで火災リスクを減らせます。
2. ブレーカーを落とす
外出や避難時は、ブレーカーを落としてから家を離れることが通電火災防止の基本です。電気器具のスイッチを切っていても、屋内配線は通電しているため、火災を引き起こす可能性があります。
地震や風水害などで家屋にダメージがあった場合は、特に注意が必要です。いざというときに慌てないように、日頃からブレーカーの位置と操作方法を確認しておきましょう。
3. 家具類を固定する

家具を固定することも、地震時の通電火災防止に効果的です。地震で家具が転倒・落下し、ヒーターなどの電気器具に可燃物が触れた状態で電気が復旧すると、火災の危険性が高まります。
タンスや食器棚はL字金具やポール式器具で壁に固定し、食器棚の扉は飛び出し防止の留め具を取りつけるなどの対策がおすすめです。家具の転倒を防ぐことで、火災だけでなくケガの防止や避難経路の確保にもつながります。
4. 感震ブレーカーを設置する
地震直後に必ずブレーカーを落とせるとは限りません。その際に、役立つのが感震ブレーカーです。感震ブレーカーは、一定以上の揺れを感知すると自動的に電気を遮断する仕組みになっており、停電復旧時の通電火災を防ぎます。
身の安全を最優先に避難できるため、一人暮らしや高齢者世帯にもおすすめです。感震ブレーカーにはさまざまなタイプがあるため、自宅に合ったものを選んで災害時に備えましょう。
【あわせて読みたい】感震ブレーカーとは?設置する必要性や種類・注意点も詳しく解説
分電盤タイプ
分電盤タイプは、感震ブレーカーの中でも専門の工事業者が設置するため、作動の信頼性が高いのが特徴です。分電盤に内蔵されたセンサー(内蔵型)や後付けの感震機能(後付型)が地震の揺れを感知します。
揺れを感知してから3分ほどの待機時間があり、その後にブレーカーを切って電気を遮断します。この待機時間により、避難時に照明が確保できるため安心です。分電盤タイプは設置の際に電気工事が必要ですが、感震性能が高い点がメリットです。
コンセントタイプ
コンセントタイプの感震ブレーカーは、揺れを感知するとコンセント単位で電気を遮断します。設置には電気工事が必要な場合と不要な場合がありますが、比較的簡単に取り付けられ、費用も抑えられます。
分電盤タイプに比べると遮断範囲は限定されますが、漏電やショートを防ぐには効果的です。手軽に部分的な通電火災対策をしたい方に向いています。
簡易タイプ
誰でも手軽に導入できるのが、感震ブレーカーの簡易タイプです。強い揺れによってばねの作動や重りが落下することで、ブレーカーを切って電気を遮断します。電気工事は不要で、ホームセンターや家電量販店などで購入でき、すぐに設置できるのがメリットです。
ただし、取付方法によって作動の信頼性に差が出る可能性があります。また、作動時には通電が一斉に止まるため、避難時に真っ暗になる点にも注意が必要です。懐中電灯や足元灯を備えておくと安心です。
これら4つ以外にも、地震に備えて対策をしたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
【あわせて読みたい】地震の備えは何が必要?家の安全対策から備蓄までチェックリストつきで解説!
【アンケート1】大地震発生時に電気関連で本当に困ったこと

ここからは、防災エナジー編集部が地震で被災した経験のある方を対象におこなったアンケート結果を紹介します。
アンケートの結果、約36%の方が大災害発生時にライフラインの停止で大きな不便を感じたと答えています。その中でも特に多かったのが、電気に関するトラブルでした。ここでは、実際のアンケート結果をもとに、多くの方が直面した電気にまつわる困りごとを紹介します。
困ったこと1. 計画停電・長期間の停電が生じた
- 計画停電をすることになり仕事ができるかすごく不安だった。
- 発電所損傷に伴う計画停電があるとは思わなかった。
- 震源地とはかなり離れていたのに計画停電の対象になった。
計画停電や長期間の停電が発生したこと自体に驚いたという声や、仕事ができなくなることへの不安を感じたなどの意見がありました。震源から離れた地域でも計画停電の対象になることもあり、災害時は予想以上に広範囲で電気が使えなくなる可能性があります。長時間の停電も想定し、仕事や生活に支障が出ないように日頃から備えておくことが大切です。
困ったこと2. 電化製品が使えなくなった
- 停電しファンヒーターが使えず、反射ストーブ(石油ストーブ)だけでは寒くて大変でした。
- 会社の暖房が使えなくなりとても寒かった。
- 暖房が止まったままだったのは想定外でした。
災害による停電で電化製品が使えず、厳しい生活を強いられたという声も多くありました。特に真夏や真冬の停電は、エアコンなどの冷暖房器具が使えないため、生活に大きな影響を及ぼします。
最悪の場合、熱中症や低体温症など命にかかわる危険もあります。災害時に備えて、夏は冷却グッズ、冬はカイロや毛布など、防寒具を準備しておきましょう。
【アンケート2】大地震発生時に電気関連で後悔したこと

次に、大地震発生時に電気関連で「もっと準備しておけばよかった」と後悔したことを3つ紹介します。どのような備えが必要かわからない方は、経験者の声を参考にして災害時に困らないように準備を進めましょう。
1. モバイルバッテリーを日頃から充電しておけばよかった
- スマホの充電をしておくこと。モバイルバッテリーも充電しておくべきだった。
- (携帯の)充電器は必ずフル充電して、各自持つようにしたい。
災害時にスマホの充電切れで困らないためには、モバイルバッテリーを日頃から充電しておくことが大切です。アンケートでも「モバイルバッテリーを準備しておけばよかった」という声が多く寄せられました。
災害による停電が長引き、スマホの充電ができなくなると、情報収集や連絡手段が途絶え、不便な生活を強いられます。普段からスマホの充電残量を気にかけ、モバイルバッテリーを持っていない方は購入しておきましょう。また、スマホの節電対策として、画面の照度を下げたりエコモードを活用したりするのも効果的です。
2. 電気が使えなくなっても問題ないように対策する
- 電気を使わない照明器具や加熱器具は大事だと思った。
- 電気を使わない照明や加熱器具も余裕を持って準備しておくべき。
停電時でも最低限の生活ができるように、必要なものを揃えておきましょう。アンケートでは、必要なものを備えていたつもりでも、想定以上の大地震だったら足りなかったという声もありました。
懐中電灯やカセットコンロ、ランタンに加え、夏場は冷却グッズ、冬場はカイロや毛布などの季節用品も揃えておきましょう。電気に頼らなくても一定期間しのげる準備をしておくことで、災害発生時の不安を減らせます。
3. 発電機や蓄電池を用意しておけばよかった
- 発電機を用意しておけば良かった。
- 蓄電池があればよかった。
災害による長期間の停電でも電気を確保するために、発電機や蓄電池を準備しておけばよかったという声も多くありました。モバイルバッテリーでは容量が足りない場合でも、発電機やポータブル蓄電池があれば、照明や電化製品にも給電できます。
ポータブル蓄電池にはさまざまな容量やデザインがあるため、家族構成や必要な電力に合わせて選ぶことがポイントです。停電時でも安心して生活を続けるために、自宅に合った備えを検討しておきましょう。
通電火災に関するよくある質問

最後に、通電火災に関するよくある質問に回答します。感震ブレーカーの設置方法や通電火災のリスクについて、詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
感震ブレーカーの設置方法は?
感震ブレーカーはタイプによって設置方法が異なります。分電盤タイプや埋め込み型のコンセントタイプは電気工事が必要になるため、電気工事会社に依頼して取り付けてもらいましょう。
一方で、差し込み型のコンセントタイプや簡易タイプは工事不要で、自分で購入して設置できます。住宅に合ったタイプを選び、万が一のときに作動するように備えておくことが重要です。
オール電化住宅でも通電火災のリスクはある?
オール電化住宅は火を一切使用しないため、ほかの住宅と比べると火災が起こる可能性は低いとされています。ただし、配線が損傷して異なる2本の電線が接触すると、ショートして火災につながる可能性はあります。
また、地震発生時に電気ストーブに布団や衣類がかかった状態で復旧すると、通電時に着火する危険性もあるため、油断は禁物です。電気ストーブの近くに可燃物を置かない、家具を固定するなど、基本的な対策を忘れずにおこないましょう。
通電火災への対策をして、安全な暮らしを守ろう!
本記事では、通電火災の原因や対策について詳しく説明しました。通電火災は、地震や風水害などの災害後に発生する可能性がありますが、日頃の備えでリスクは減らせます。電気器具のコンセントを抜く、感震ブレーカーを設置するなど、できることから対策を進めておきましょう。
さらに、大規模災害では計画停電や長期間の停電が発生し、スマホや電化製品が使えず困ったという声も多くありました。通電火災の備えと合わせて、停電時の対策もしっかり整えておくことが大切です。




