台風は、強風や大雨によって電線や電柱、送電設備に大きな被害を与え、広範囲で停電を引き起こすことがあります。過去の台風でも、電柱の倒壊や飛来物による電線損傷、設備の塩害などが原因で長期間の停電が発生しました。
このような事態に備えて事前に対策をしておけば、停電時でも最低限の生活を維持できるでしょう。
そこでこの記事では、台風による停電の主な原因や過去の被害事例について詳しく解説します。また、台風による停電に備えるための7つの対策も紹介します。被害を最小限に抑えるためのポイントを知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
- 台風で停電になるのはなぜ?
- 木や建物の倒壊による設備損傷
- 強風による電柱の倒壊
- 飛来物による電線の損傷
- 土砂崩れや海風によって停電する恐れもある
- 2019年台風15号による停電の被害
- 台風による停電に備えるための対策7選
- 1. テレビ・インターネットで防災気象情報を確認する
- 2. 家の補強をする
- 3. 冷凍庫にペットボトルを数本入れておく
- 4. 側溝・排水溝を掃除する
- 5. 防災グッズを準備する
- 6. 避難場所・避難経路を確認する
- 7. パソコン・スマホの充電をしておく
- 【アンケート】大規模災害発生時に電気関連で困ったこと
- 長期間の停電・計画停電が発生したこと
- 電化製品が使えなくなったこと
- タイムライン別台風が来るときの行動チェックリスト
- 台風・停電に関するよくある質問
- 台風による停電はいつ復旧する?
- 台風で停電したときの暑さ対策はどうすればいい?
- 台風による停電対策を万全にしておこう!
台風で停電になるのはなぜ?

台風のときに停電が発生することがありますが、その原因はさまざまです。ここでは、よくある停電の原因を4つ紹介します。なぜ停電が起こるのか詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
木や建物の倒壊による設備損傷
台風による停電の原因の1つは、木や建物の倒壊による設備損傷です。特に、台風では老朽化した建物や木が倒れやすく、被害が広がることがあります。
さらに、倒壊物の撤去には時間がかかるため、復旧作業が長引き、長期にわたって停電する可能性も考えられます。台風の接近が予想される場合は、周囲に倒れそうな構造物がないか事前に確認し、安全対策を講じておきましょう。
強風による電柱の倒壊
想定を超える強風によって電柱が倒れることも停電の原因の1つです。電柱は通常、風に耐えられるよう設計・点検されていますが、台風による突風や長時間の暴風には耐えられない可能性もあります。
実際に、2019年の台風15号では、1,996本の電柱が倒壊・傾斜し、大規模な停電と復旧の長期化を招きました。全国から約1万人が復旧支援に駆けつけましたが、電力会社ごとに使用する工具が異なり、作業の進行に影響が出たという報告もあります。
飛来物による電線の損傷
飛ばされた屋根や看板、木の枝などが電線に当たって損傷し、停電が起きることがあります。台風時には強風でさまざまなものが飛ばされやすく、思わぬ被害につながるケースも少なくありません。
過去の台風でも、飛来物による電線損傷で広範囲に停電が発生した事例があります。被害を最小限に抑えるためにも、風で飛ばされそうなものは事前に屋内へ移すなどの対策が必要です。
土砂崩れや海風によって停電する恐れもある
台風による土砂崩れや海風が原因で、停電が発生することもあります。大雨で土砂が崩れて鉄塔が倒壊すると、広範囲で停電になることが予想されます。
また、海沿いでは強風とともに飛んできた塩分が電気設備に付着し、漏電を引き起こす塩害が発生します。この塩害も、停電の原因の1つです。鉄塔や碍子(がいし)などの送電設備は風雨にさらされやすいため、台風時は特に注意が必要です。
2019年台風15号による停電の被害

2019年の台風15号は千葉県を中心に大雨と猛烈な風をもたらし、人的被害や建物の損壊、大規模な停電を引き起こしました。東京電力管内では最大約93万戸が停電し、特に千葉県では最大約64万戸が停電する深刻な被害が出ました。東京電力管内における停電戸数の推移は以下の通りです。
| 日時 | 9月9日8時 | 9月10日8時 | 9月13日8時 | 9月24日19時 |
| 停電戸数 | 約93万戸 | 約63万戸 | 約20万戸 | 停電解消 |
すべての停電が復旧するまでには、約2週間を要しました。大規模な倒木によって立ち入りが困難な地域が広がり、電力設備の被害も広範囲に及んだことが復旧作業の長期化につながりました。
台風による停電に備えるための対策7選

台風の接近時には、停電のリスクが高まります。突然停電が発生しても落ち着いて対応できるようにするには事前の備えが大切です。ここでは、台風による停電に備えてできる対策を7つ紹介します。停電時の備えについて、より詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
【あわせて読みたい】停電への備えとして用意すべき7つのものとは?注意点もあわせて解説
1. テレビ・インターネットで防災気象情報を確認する
気象庁が発表する大雨や台風に関する防災情報をこまめに確認しましょう。大雨や台風の際に発表される主な警報・注意報には、以下のようなものがあります。
| 特別警報 | 大雨(土砂災害・浸水害)、暴風、波浪、高潮 |
| 警報 | 大雨(土砂災害・浸水害)、洪水、暴風、波浪、高潮 |
| 注意報 | 大雨、洪水、強風、波浪、高潮、雷 |
危険の度合いに応じて、注意報・警報・特別警報が段階的に発表されます。最新の防災気象情報を確認し、早めの避難や安全確保の行動を心がけましょう。
2. 家の補強をする
強風による被害を防ぐために、事前に家の補強をしておきましょう。トタン屋根や物干しざお、植木鉢、ゴミ箱など、飛ばされやすいものは固定するか室内へ移動させておきます。
また、窓ガラスは飛来物で割れる可能性があるため、飛散防止フィルムを貼っておくと安心です。必要に応じて屋根や塀の強度も点検・補修しておきましょう。
3. 冷凍庫にペットボトルを数本入れておく
停電時に備えて、冷凍庫にペットボトルを数本凍らせておくことがおすすめです。停電で冷蔵庫が使えなくなると中の食品が腐敗し、食べられなくなる可能性があります。凍ったペットボトルを冷蔵庫内に移せば冷気を保ちやすくなり、食品の傷みを防げます。
さらに、断水が起きても解凍すれば飲料水として活用可能です。冷凍する際は、ペットボトルの破損を防ぐために少し水を減らしておきましょう。ペットボトルを立てて凍らせれば、フタも開けやすく便利です。
4. 側溝・排水溝を掃除する
水はけを良くして浸水を防ぐために、台風が来る前は側溝や排水溝の掃除をしておきましょう。落ち葉や泥が詰まっていると、大雨で水があふれて道路が冠水したり、家が浸水したりする可能性があります。
浸水すると、感電の危険があるため電気が使えなくなるほか、家の修理費もかさみます。被害を最小限に抑えるためにも、日頃から点検と清掃をおこなっておきましょう。
5. 防災グッズを準備する
台風による停電や避難に備えて、防災グッズを事前に準備しておきましょう。飲料水や食料、懐中電灯、救急用品、衛生用品など、必要なものを非常持ち出し袋にまとめておくと、緊急時もすぐに避難できます。以下のチェックリストを活用し、家族構成やライフスタイルに合わせて中身を調整しましょう。
避難所生活で必要なものについて、詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
【あわせて読みたい】避難所生活で必要なもの7選!状況別で備えておきたい防災グッズも紹介
6. 避難場所・避難経路を確認する
災害時に慌てず行動するには、事前に避難場所・避難経路の確認をしておくことが大切です。ハザードマップを活用して、自宅周辺の洪水・土砂災害・高潮・津波などのリスクを把握しておきましょう。
自分が住む地域の危険度を知ることで、最適な避難先や安全なルートを選ぶ判断がしやすくなります。家族とも共有し、いざというときにスムーズに避難できるよう備えましょう。
7. パソコン・スマホの充電をしておく
台風が接近する前に、パソコンやスマホの充電は必ず満タンにしておきましょう。災害時は避難情報や台風の最新情報を得るほか、家族や知人と連絡を取るためにも欠かせません。
停電すると充電ができなくなるため、事前に準備しておくことがポイントです。さらに、モバイルバッテリーを用意しておけば、長期間の停電でも電気機器を使用できます。
【アンケート】大規模災害発生時に電気関連で困ったこと
ここでは、大規模災害を経験した方々に聞いた、災害時の電気に関する困りごとのアンケート結果を紹介します。停電時にどのような不便や問題が起きるのかを知っておくことで、事前の備えにも役立てられるでしょう。
長期間の停電・計画停電が発生したこと
- 電気が止められたことは今でも忘れられない
- 計画停電をすることになり仕事ができるかすごく不安だった
- 定期的にくる計画停電です。電気がないだけで、行動がかなり制限させられることを実感しました。
長期間の停電や計画停電が発生したことに困ったという声が多く寄せられました。電気は、わたしたちの生活に欠かせないものであり、長時間使えない状況になると日常の多くの行動が制限されます。
計画停電では、仕事が続けられるのか不安に感じたという意見もありました。このような長期間の電力不足に備えるためには、モバイルバッテリーやポータブル電源を準備しておくことが大切です。事前に準備しておけば、停電時でも必要な電力を確保できます。
電化製品が使えなくなったこと
- 暖房が止まったままだったのは想定外でした。
- 停電だったので、1月なので寒くて暖を取るのに苦労しました
- 停電しファンヒーターが使えず、反射ストーブだけでは寒くて大変でした。
停電により電化製品が使えず困ったという声も多く寄せられました。特に真夏や真冬は、エアコンや暖房が使えなくなることで日常生活に大きな影響が出ます。
場合によっては熱中症や低体温症などの危険も伴うため、防災グッズには季節に応じたアイテムを入れておくことが大切です。事前に停電時の過ごし方を想定し、代替手段を準備しておくことで、いざというときも落ち着いて行動できます。なお、停電時に暑さ・寒さ対策に役立つ具体的なアイテムは以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
【あわせて読みたい】停電時にエアコン代わりになる3つのものとは?事前にできる備えも紹介
タイムライン別台風が来るときの行動チェックリスト
| タイムライン | チェック | 具体的な行動 |
|---|---|---|
| 台風接近3日前 | □ | 自宅・職場の危険度をハザードマップで確認する |
| □ | 避難場所・避難経路を家族で共有する | |
| □ | 気象庁の台風情報や警報・注意報を確認する | |
| 台風接近前日 | □ | 風で飛ばされそうなものはすべて片付けるか固定する |
| □ | 窓・雨戸に鍵をかけて必要なら補強する | |
| □ | 側溝・排水溝を掃除して浸水に備える | |
| □ | お風呂に水を貯めて生活用水を確保する | |
| □ | スマホ・モバイルバッテリーを充電する | |
| □ | 防災グッズ・備蓄品を準備する | |
| 台風接近当日 | □ | 不要不急の外出は絶対にしない |
| □ | 川や崖、海など危険な場所には絶対に近づかない | |
| □ | 窓に近づかない |
台風に備えるには、接近時期にあわせた段階的な準備が効果的です。台風接近3日前までには、情報収集して内容を家族と共有し、ハザードマップで自宅・職場周辺の危険度を確認しておきましょう。台風前日は家の外や中の備えを万全にし、風で飛ばされそうなものは片づけ、スマホやモバイルバッテリーの充電を満タンにします。
当日は不要不急の外出を避け、川や海などの危険な場所には近づかないようにしましょう。台風が来る前に備えておくものについては、以下の記事の内容も参考にしてください。
【あわせて読みたい】台風に備えておくものチェックリスト!大切なこと・やってはいけないことも解説
台風・停電に関するよくある質問
最後に、台風による停電に関するよくある質問に回答します。停電復旧までの時間や暑さ対策について、詳しく知りたい方はぜひチェックしてみてください。
台風による停電はいつ復旧する?
台風による停電の復旧時間は、台風の規模や被害の程度によって大きく異なります。過去に発生した停電では、2018年の台風21号で復旧まで約5日、台風24号で約3日、2019年の台風15号で約12日を要しました。
このように、停電が長期化する可能性があるため、数日間電気が使えなくても生活できるように備えておくことが大切です。飲料水や食料品の備蓄、懐中電灯や簡易トイレの準備など、できることから対策を進めましょう。
台風で停電したときの暑さ対策はどうすればいい?
停電でエアコンが使えない場合、まずは涼しい服装に着替えて、窓を開けて風通しをよくしましょう。喉が渇いていなくてもこまめに水分を補給し、水浴びや濡れタオルで体を冷やすことも効果的です。また、冷房のある公共施設や商業施設へ移動して暑さをしのぐ方法もあります。
真夏に長時間冷房が使えない状態では、熱中症の危険が高まります。子どもや高齢者は特に体温調節が難しいため、周囲と声をかけ合いながら暑さ対策をして、安全に過ごせる環境を確保しましょう。
台風による停電対策を万全にしておこう!
本記事では、台風によって停電が発生する原因を4つ解説しました。木や建物の倒壊による設備損傷や、飛来物による電線の損傷などにより停電が発生することがあります。過去の台風では、停電が長期化した事例もあるので、そのような事態を想定して事前に備えておくことが大切です。
台風の接近が予想される際は、風で飛ばされそうなものを室内に移動させ、必要に応じて補強や側溝の掃除をおこないましょう。さらに、防災グッズの準備や避難経路の確認をしておけば、緊急時も落ち着いて行動できます。日頃から備えを進めて、自分と大切な人の安全を守りましょう。


