災害の歴史

東日本大震災のマグニチュード9.0とは?規模・影響・今後の対策を解説

2011年3月11日、日本は観測史上最大規模の地震「東日本大震災」に見舞われました。
この地震のマグニチュードは9.0を観測し、日本のみならず、世界的にも類を見ない巨大地震として、甚大な被害と深い教訓を残しました。

「マグニチュード9.0とは、いったいどれほどの規模なのか」
「マグニチュード9.0の影響はどこまで及び、どう備えるべきなのか」


と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、「マグニチュード」の基本的な意味や種類、震度との違いをわかりやすく解説します。また、東日本大震災がもたらした影響や今後想定される南海トラフ地震への備えについて、具体的な対策とともにお伝えします。

過去の経験から学び、未来の命を守るために、ぜひ最後までご覧ください。

目次

そもそもマグニチュードとは

地震災害のイメージ

マグニチュードが実際にどのような意味を持つのか、正確に理解している人は少ないのではないでしょうか。

ここでは、マグニチュードの定義や種類、震度との違いについてわかりやすく解説します。

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マグニチュードの定義

マグニチュードとは、地震で放出されたエネルギー量を数値化したものです。地震そのものの大きさ(規模)を示す指標であり、震源からの距離に関係なく、地震ごとに1つだけ決まる数値です。

たとえば、マグニチュードが1上がるとエネルギーは約32倍、2上がると約1,000倍になります。マグニチュードの増加は、地震エネルギーの飛躍的な増大を意味します。

巨大な地震では、全エネルギーを放出しきれずに余震が頻発し、マグニチュードが大きいほど余震の規模や継続期間も大きくなる傾向にあります。

マグニチュードの種類

地震の規模を示す「マグニチュード」には、種類があります。

日本の気象庁で使用するのは、主に以下の2種類です。

  • 独自に定めた気象庁マグニチュード(Mj)
  • 世界的に用いられるモーメントマグニチュード(Mw)

マグニチュードは直接測れない指標のため、観測するデータや計算方法によって種類が異なり、それぞれ得意な場面があります。

主な違いは以下の通りです。

項目気象庁マグニチュード(Mj)モーメントマグニチュード(Mw)
特徴小さな地震にも対応し、過去の地震と比較しやすい大きな地震でも正確な規模を表せる
使い方の違い地震発生直後の速報や津波警報など巨大地震など正確な規模を知りたいとき
データの使い方揺れの最大振れ幅をもとに計算断層のずれの大きさから計算
(物理的に意味が明確)
短所巨大地震では正確に測れないことがある計算に時間がかかり、速報では使いづらい
使い方の例
(東日本大震災)
最初はMj7.9、後にMw9.0に更新震災後、規模をより正確に伝えるためにMwを採用
出典:気象庁|地震情報等に用いるマグニチュードについて

気象庁では速報ではMj、巨大地震ではMwと使い分け、それぞれの長所を活かし地震の規模を正確に伝えています

マグニチュードと震度の違い

マグニチュードは地震全体のエネルギー、震度はその場の揺れの体感を意味します。この2つは、似ているようで実際には全く異なる性質を持つ指標です。

マグニチュードは、地震そのものの大きさを表すものです。

震源の真上にあたる地表の地点である震央からの距離や、地盤の状態に関係なく「どれくらい大きなエネルギーが放出されたか」を意味します

一方で震度は、各地点での揺れの強さを表し、震源からの距離や地形、建物の状況によって変化します

マグニチュードと震度の違いは、以下の通りです。

項目マグニチュード震度
定義地震全体の規模
(放出されたエネルギーの大きさ)
各地点での揺れの強さ
(体感や被害)
測定方法地震波の振幅や地震モーメントなどから計算震度計による観測
(日本では10段階)
単位数字で表す
(例:M7.3)
震度0~7
(例:震度5強)
影響の範囲地震全体に関わる数値
(1つの値のみ)
地域ごとに異なる
(場所によって異なる震度)

マグニチュードが大きくても震源から離れていれば震度は小さく感じられ、逆に震源に近ければ震度が大きくなります。

東日本大震災のマグニチュード

地震災害

東日本大震災は、日本列島に未曾有の被害をもたらしました。マグニチュード9.0という数値は、日本国内で観測された地震の中で最大規模であり、世界的に見ても極めて大きな地震として歴史に刻まれています。

ここでは、東日本大震災がいかに規模の大きな地震だったのかを振り返ってみましょう。また、過去の大震災とマグニチュードを比較しながら、その影響力の大きさについて解説します。

東日本大震災のマグニチュード9.0

東日本大震災のマグニチュードは9.0で、日本国内の観測史上最大規模の地震でした。この地震は、1952年のロシアのカムチャッカ地震と同じ規模で、世界的にも極めて大きな地震であったことがわかっています。

東日本大震災の震源は三陸沖、宮城県牡鹿半島の東南東約130km付近、深さ24kmでした。アメリカ地質調査所(USGS)の情報によれば、1900年以降に世界で発生した地震の中で、世界第4位の規模だったのです

東日本大震災は日本国内最大であるとともに、世界でも歴史的な規模の大地震であったことがわかります。

阪神淡路・関東大震災とのマグニチュード比較

東日本大震災と関東大震災、阪神・淡路大震災をマグニチュードで比較すると、東日本大震災はほかの地震を大きく上回る、桁違いの規模だったことがわかります。

項目東日本大震災関東大震災阪神・淡路大震災
発生年2011年
(平成23年)
1923年
(大正12年)
1995年
(平成7年)
マグニチュードM9.0
(日本最大)
M7.9M7.3
特徴世界4番目の規模、
広域被災
首都圏直撃、
火災による被害大
都市直下型、
局地的甚大被害
出典:総務省消防庁|物的被害の状況(3.3.6 公共インフラ及びライフライン等の被害

マグニチュードが1違うと、地震エネルギーは約32倍、2違うと約1,000倍になるため、東日本大震災は阪神・淡路大震災のと比べて約1,000倍のエネルギーを持っていたのがわかります

東日本大震災は、マグニチュードから見ても地震規模の違いが明らかです。防災対策の内容や広域支援の必要性も、マグニチュードに応じて変わってくるのがわかるでしょう。

マグニチュード9.0の地震で起こること|影響はどこまで及ぶ?

マグニチュード9.0の地震は、日常的に経験する地震とは次元の異なる破壊力を持ち、広範囲にわたって深刻な影響を及ぼします。ただの「強い揺れ」ではなく、社会全体の機能が麻痺し、命に関わる重大な被害が発生する可能性があります。

ここでは、揺れの広がりや建物・インフラの被害、津波のリスクまで、実際の被害例をもとに詳しく解説します。

揺れの範囲が広くなる

マグニチュードが大きい地震ほど、広い範囲で強い揺れが起こる可能性が高まります。震度は地震の規模(マグニチュード)だけでなく、震源からの距離や地盤の状況、地震波の伝わり方など、さまざまな要因によって決まります。

一般的に、震源域から離れるほど震度が小さくなりますが、必ずしも同じように揺れが軽くなるわけではありません。

条件震度への影響の傾向
マグニチュードが大きい広範囲で震度が大きくなる可能性が高まる
震源域から近い強い揺れ(震度大)を感じやすい
震源域から遠い揺れは弱まりやすいが、どれも同じではない
地震の発生深さが浅い地表に伝わる揺れが強くなる傾向がある
地盤が柔らかい
(例:埋立地など)
揺れが増幅し、震度が大きくなる場合がある

マグニチュードが大きくても震度がつねに大きいとは限らず、地震の発生場所や地盤の状態によって揺れの感じ方は大きく異なります

建物やインフラに大きな被害が出る

マグニチュード9.0の地震では、広範囲にわたり建物やインフラが甚大な被害を受け、復旧・復興にも長期を要します

東日本大震災は、マグニチュード9.0を記録し、以下のような被害が生じました。

条件被害
死者・行方不明者死者19,747人・行方不明者2,556人
住家被害全壊・半壊・一部損壊 合計1,154,893棟
経済的被害額
(推計)
約16.9兆円
(阪神・淡路大震災の1.7倍)
インフラへの影響高速道路・港湾・通信・電力網など広範に被害

このように地震の規模が極めて大きく、激しい揺れや津波が広範囲に及ぶため、住宅や社会資本、ライフラインなどのストック資産に壊滅的な影響を与えます。また、ストック被害だけで数十兆円規模の損害が発生し、生活や経済活動も長期間にわたり混乱するでしょう。

海底の断層がずれると大津波が発生する

海底の断層が大きくずれることで、巨大な津波が発生することがあります。これは、東日本大震災で明らかになった現象です。

東日本大震災では、プレート境界断層の浅い部分で大きなすべりが起きたため、巨大津波が発生しました。このような断層のずれによって、海底の地形が急激に変化し、大量の海水が持ち上げられて津波が発生する仕組みです。

海底断層の大規模なずれは、巨大津波の発生に直結するため、その規模や分布を把握することは今後の津波防災において重要といえるでしょう

南海トラフ地震で予想されるマグニチュード

内閣府の発表によると、南海トラフ地震では、マグニチュード9.0級の巨大地震と津波が想定されています。千年に一度の頻度で発生するとされ、東日本大震災を超える被害が想定されています。

南海トラフ地震の想定は、以下の通りです。

想定項目具体的な内容
想定地震南海トラフ巨大地震
想定マグニチュード最大クラスでM9.1程度
(千年に一度規模)
震源域東海〜四国沖の南海トラフ沿い
被災範囲東海・関西・四国・九州など日本の広域
被害の性質強震動・津波・液状化・火災・ライフライン寸断など
経済被害
(資産など)
81.8兆〜169.5兆円
(被害小〜最大クラス)
生産・サービス低下損失最大44.7兆円
出典:内閣府|大規模地震・津波対策の基本スタンス

被害想定は「中程度〜最大クラス」で、内閣府の試算によれば、資産損害だけで81.8兆〜169.5兆円規模に達する可能性があります

また、マグニチュードは最大9.1程度までを想定し、東海地方から四国・九州に至る広範囲で甚大な被害が生じる想定です。内閣府では「正しく恐れてもらうこと」を重視し、最悪のケースを想定した最大クラスの地震・津波を前提に防災・減災対策を推進しています。

マグニチュード9.0の地震から身を守るためにできること

災害の避難セット

マグニチュード9.0級の巨大地震は、日常生活を一変させるほどの甚大な被害をもたらします。しかし、被害を最小限に抑え、自分や大切な人の命を守るためには「日頃の備え」と「正しい行動」が何より重要です

いざというときに慌てず対応するために、正確な情報の入手方法や避難の備え、津波リスクへの対処、ライフライン途絶への備えなど、具体的な対策を確認しておきましょう。

正確な地震情報を入手する

マグニチュード9.0級の巨大地震から身を守るためには、うわさや誤情報に惑わされず、信頼できる情報源から正確な地震情報を入手することが重要です

災害時は、不安が広がりSNSなどを通じて根拠のない情報が拡散される場合があるでしょう。情報に流されると、冷静な避難行動が妨げられ、命に関わるリスクも高まります。内閣府や気象庁では、南海トラフ地震臨時情報や緊急地震速報など、最新で信頼できる情報を発信しています。

信頼できる情報源の例は、以下の通りです。

情報提供元内容
気象庁南海トラフ地震臨時情報、緊急地震速報
内閣府防災ガイド、臨時情報に関する詳細
地方自治体地域ごとの避難情報、避難所案内
政府広報オンライン地震・津波時の対応、デマ情報注意の呼びかけ

巨大地震時に落ち着いた行動をとるには、正確で迅速な情報入手が不可欠です。信頼できる公式情報を確認する習慣をつけ、うわさに流されない冷静な判断力を備えましょう。

震度6以上の揺れに備える

震度6以上の強い揺れに備えるためには、日頃から住まいの安全対策や避難準備を整えておきましょう。

南海トラフ地震は、東海から九州にかけて広範囲で震度6弱以上の揺れや津波による甚大な被害が想定されており、いつ発生してもおかしくない状況です。また、強い揺れによって家具が転倒したり、出火やインフラ被害が発生するリスクが高まるため、事前の備えが重要です。

以下の備えを日頃から徹底しましょう。

対策項目内容
室内安全対策家具の転倒防止(固定)
ガラスの飛散防止フィルム
照明器具・テレビの固定
出火防止対策感震ブレーカーや漏電遮断機の設置
火災警報器の点検・電池交換
避難準備ハザードマップで危険地域や避難所の確認
家族で避難経路・連絡手段の話し合い
非常持ち出し品水・食料・簡易トイレ・ラジオ・懐中電灯・バッテリーなど
特別な備え
(外出)
非常持ち出し品(現金・身分証・充電器等)を持ち歩く
避難しやすい服装を心がける

震度6以上の揺れは、生活を一変させる危険な災害です。平時から室内環境や避難体制を整え、いざというときにすぐ行動できる準備をしておき、自分や家族の命を守りましょう。

津波のリスクがある場合の避難行動

津波のリスクがある場合は、強い揺れや津波警報を感じたら、ただちに高い場所へ避難するのが重要です

津波は一度きりではなく、何度も繰り返し襲来する可能性があり、避難が遅れると命に危険が及びます。また、海岸から離れていても、川沿いを通って津波が到達する場合もあるでしょう。

津波に備えて、以下の備えをしておきましょう。

状況内容
揺れを感じた場合海辺や川沿いにいる場合はすぐにその場から離れ、高い場所へ避難する
津波警報・注意報が出た場合警報が解除されるまで絶対に戻らず避難を継続し、注意報でも海岸には近づかない
日頃の備えハザードマップで危険区域・避難場所を確認、避難訓練に参加、複数の避難経路を把握しておく
情報入手方法テレビ・ラジオ・防災無線・緊急速報メールなどで正確な情報を確認し続ける

津波のリスクがある際は「すぐに逃げる・戻らない・正しい情報を確認する」の3つを徹底し、命を守る行動を取りましょう。特に沿岸部では、日頃から避難の準備をしておくことが、被害を最小限に抑えるポイントとなります。

停電・通信障害に備える

地震発生後は広域で停電や通信障害が発生するおそれがあるため、ライフラインが使えない状況に備えておくことが重要です

南海トラフ地震のような大規模地震では、電力や通信インフラが広範囲に被害を受け、スマートフォンの充電や情報収集が困難になる可能性があります。

停電や通信障害に備えておくことで、災害時の混乱を最小限に抑えられます。

  • 非常用の予備バッテリーや携帯ラジオを準備する
  • 就寝時はスマートフォンや懐中電灯を枕元に置く
  • 感震ブレーカーや漏電遮断機を設置し、出火リスクを軽減する
  • 家族との連絡手段や集合場所を事前に決めておく

大規模停電・通信障害への備えは、自身や家族の安全を守るために欠かせません。日頃から準備を進め、万が一のときに冷静に対応できるようにしておきましょう

家族や地域で防災計画を立てる

災害時に落ち着いて行動するためには、家族や地域で防災計画を立て、避難や連絡方法を事前に共有しておきましょう。

南海トラフ地震のような大規模災害では、交通や通信が混乱し、家族と連絡が取れなくなる可能性が高いです。また、避難の際には地域との協力が不可欠のため、日頃から以下のような計画を立てておくと、被害を最小限に抑えられます。

  • 地域のハザードマップで危険箇所や避難場所を確認する
  • 家族で避難経路や集合場所、連絡手段を話し合い、共有する
  • 防災訓練や地域の避難訓練に参加し、実際の避難行動を体験する
  • 自宅の家具転倒防止や出火対策をおこない、安全な住環境を整える
  • 地域の自主防災組織や近隣住民と連携し、情報共有や支援体制を構築する

日頃から家族・地域で防災計画を立てると、いざというときに命を守る行動が取れます。事前の準備が、災害時の冷静な判断と安全な避難につながるでしょう。

東日本大震災のマグニチュード9.0を教訓に備えよう

東日本大震災で記録されたマグニチュード9.0という巨大地震は、想像を絶する被害をもたらし、多くの尊い命と、かけがえのない日常を奪いました。

災害は、いつかまた必ずやってきます。しかし、過去から学び、備えることができれば、その被害を最小限に抑えることは可能です。日頃の防災意識と具体的な行動が、自分や大切な人の命を守る最も確かな力になるでしょう。

「備えていてよかった」と思える日が来るように、東日本大震災の教訓を心に刻み、一人ひとりができることを今から始めていきましょう。