災害に備える

高齢者の防災対策で本当に必要なものは?今すぐできる備えも解説

災害による犠牲者の多くを高齢者が占めるというデータがあり、高齢者の場合、若い世代とは異なる視点での対策が欠かせません。離れて暮らすご両親を守るためには、災害時に高齢者が抱えやすい課題を理解し、高齢者ならではの防災グッズを備えることが重要です。

この記事では、高齢者が災害時に直面しやすい具体的な課題を明らかにしながら、今日から実践できる防災対策を解説します。さらに、本当に必要な防災グッズのチェックリストもまとめています。

この記事を読めば、離れて暮らすご両親の安全を守るためにすべきことが明確になるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

目次

高齢者が災害時に本当に困ること・課題3つ

高齢者

災害はすべての人にとって大きな脅威ですが、高齢者にとっては以下のような事態を引き起こす可能性があります。

  1. 身体的な理由で迅速な避難が難しい
  2. 必要な情報がリアルタイムで得られない
  3. 避難所での生活で体調を崩しやすい

ここからは、それぞれの課題について解説します。

課題1. 身体的な理由で迅速な避難が難しい

高齢者の中には、身体的な理由から迅速な避難が困難な方がいます。

特に、足腰が弱っていたり、持病を抱えていたりする場合、階段の上り下りや瓦礫が散乱した道の移動に時間がかかります。場合によっては、逃げ遅れの原因となるでしょう。

車いすや歩行器を利用している方にとっては、わずかな段差や階段が避難を阻む大きな壁となります。

実際に、過去の災害では、身体的な理由で自力での避難ができなかった高齢者が多くいたことが報告されています。

課題2. 必要な情報がリアルタイムで得られない

災害発生時は正確な情報をいち早く入手する必要があります。しかし、高齢者は、情報収集の手段が限られている場合があります。

多くの方がテレビやラジオから情報を得ていますが、停電が発生するとこれらのツールは機能しません。スマートフォンを持っていても、インターネットやSNSを使いこなせない高齢者は、避難指示や給水所の場所などのリアルタイムで更新される重要な情報を見逃してしまう可能性があります。

情報ツールの利用が困難なために孤立してしまい、適切な支援を受けられない恐れがあるのです。

課題3. 避難所での生活で体調を崩しやすい

無事に避難できたとしても、避難所での生活は高齢者にとって心身ともに大きな負担となります。慣れない環境での共同生活はストレスが大きく、プライバシーの確保も困難です。

ほかにも、避難生活でリスクが高いのは、体を動かす機会が減ることによる生活不活発病です。これは、心身の機能が低下する状態で、認知症やエコノミークラス症候群などを引き起こす危険性もあります。

さらに、支給される食事が食べ慣れないものであったり、水分摂取が不足しがちになったりすることも、体調を崩す一因です。また、持病がある場合、治療が中断することで悪化する危険性があります。

【災害前】今日からできる高齢者の防災対策5ステップ

チェックリスト

ご両親の安全を守るためにも、災害が起こる前から以下の備えを始めましょう。

  1. 自宅の安全を確保する
  2. 地域の危険を知る
  3. 高齢者でも安心できる避難場所と経路を決める
  4. 家族や地域と連携する
  5. 公的支援制度に登録する

ここでは、今日からすぐに取り組める具体的な防災対策を5つのステップに分けてご紹介します。

ステップ1. 自宅の安全を確保する

地震対策例

まずは、家の中の危険を減らすことから始めましょう。大きな地震が発生したとき、室内で最も危険なのは家具の転倒です。地震による負傷者の3〜5割は、家具類の転倒・落下・移動が原因であるとのデータもあります。

タンスや食器棚、テレビなどが倒れないように、転倒防止グッズで壁に固定することが基本です。L字型の金具を使ってネジで固定するのが最も確実です。

賃貸住宅で壁に穴を開けられない場合は、突っ張り棒タイプと家具の下に敷くストッパーを組み合わせると、効果を高められます。

食器棚のガラスには飛散防止フィルムを貼り、中の食器が飛び出さないように工夫しましょう。ほかにも、本棚などは重いものを下段に収納して重心を低くすることも、転倒防止に有効です。

ステップ2. 地域の危険を知る

地域にどのような災害リスクがあるのか、ハザードマップで一緒に確認しましょう。

ハザードマップは、洪水による浸水が想定される区域や、土砂災害の危険がある場所などを地図上に示したものです。自宅周辺の危険箇所や、災害の種類に応じた安全な避難場所を事前に把握できます。

ハザードマップは、お住まいの自治体のホームページや窓口で入手できます。また、国土交通省のハザードマップポータルサイトからも確認可能です。

【あわせて読みたい】ハザードマップの種類をわかりやすく解説!マップ別の特徴と使い方も紹介

ステップ3. 高齢者でも安心できる避難場所と経路を決める

避難場所とそこまでの経路を事前に決めるのも大切な準備です。自治体が指定する最も近い避難所を確認しましょう。

高齢者や障害のある方など、特別な配慮が必要な人のために福祉避難所という施設もあります。福祉避難所は、バリアフリー化されているなど、高齢者が安心して過ごせる環境が整っています。どこにあるのか、どうすれば利用できるのかを自治体に確認しておくと安心です。

避難経路については、実際に一緒に歩いてみることが大切です。段差やブロック塀、狭い道など、危険な箇所がないかを確認しながら、安全なルートを複数見つけておきましょう。

ステップ4. 家族や地域と連携する

万が一のとき、頼りになるのは周囲とのつながりです。日頃から家族や地域の人々との連携を深めておきましょう。

特に、ご両親が2人暮らしや1人暮らしの場合、災害時に助け合えるご近所付き合いは心強い支えとなります。隣近所の方と顔見知りになり、普段からコミュニケーションをとっておくと、いざというときの安否確認や救助につながります。

家族間では、災害時の連絡方法や集合場所などを具体的に話し合いましょう。電話がつながりにくい状況を想定し、災害用伝言ダイヤル(171)の利用方法などを確認しておくことをおすすめします。

【あわせて読みたい】災害時の連絡手段5選!スマホ以外の方法や緊急連絡先カードも解説

ステップ5. 公的支援制度に登録する

多くの自治体では、自力での避難が難しい高齢者などを支援するための制度を設けています。そのひとつが「避難行動要支援者名簿」です。

避難行動要支援者名簿に登録されると、自治体や地域の支援団体が、災害のときに安否確認や避難の手助けをしてくれます。

対象者や登録方法は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体の窓口に問い合わせてみましょう。いざというときに適切な支援を受けられるよう、早めに手続きをしておくと安心です。

【チェックリストつき】高齢者に本当に必要な防災グッズ

備蓄品や防災グッズは、さまざまな状況を想定して準備する必要があります。ここでは、基本となる非常用持ち出し品と在宅避難用の備蓄品に加え、高齢者にとって本当に必要な防災グッズを紹介します。

【一次避難用】非常用持ち出し袋に入れるもの

非常用持ち出し袋 チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

災害発生時に、迅速かつ安全に避難するための持ち出し品をリストアップしました。上記のチェックリストを参考に、持ち運びやすいようにまとめておきましょう。

【在宅避難用】自宅に備蓄するもの

自宅に大きな被害がない場合や避難所への移動が危険な場合は、在宅避難という選択肢もあります。万が一、ライフラインが止まっても、自宅で数日間生活するために備蓄が必要です。

  • 食料や水(最低3日分。できれば1週間分)×家族分
  • 生活用品(ティッシュ、トイレットペーパー、ラップ、ゴミ袋、ポリタンク、携帯用トイレ…など)

最低でも3日分、できれば7日分を用意しておくと安心です。

高齢者ならではの防災グッズ

高齢者ならではの防災グッズ
・大人用紙パンツ
・杖
・補聴器
・介護食
・入れ歯・洗浄剤
・吸水パッド
・デリケートゾーンの洗浄剤
・持病の薬・お薬手帳のコピー
・折りたたみ椅子
・ノーパンクタイヤの車いす

持病のある方にとって、普段服用している薬は命に関わる最も重要なものです。最低でも7日分は用意しておきましょう。薬そのものだけでなく、薬の名前や用法がわかるお薬手帳のコピーや写真を撮っておくと、万が一薬を紛失した際に役立ちます。

ほかにも、入れ歯や老眼鏡、補聴器など、日常生活に欠かせない補助器具も忘れてはいけません。たとえば、普段使っているものが壊れたり紛失したりした場合に備え、古い眼鏡を捨てずに予備として保管しておくのもよいでしょう。災害のときには水が貴重になるため、水のいらない入れ歯洗浄シートなども便利です。

避難所のトイレは混雑し、衛生環境も悪化しがちです。我慢が体調不良につながるケースもあるため、大人用おむつや尿漏れパッドを準備しておくと安心して過ごせます。

避難所までの移動や避難所での生活では、杖や歩行器、少し腰掛けるための折りたたみ椅子があると体力の消耗を防ぐのに役立ちます。車いすを利用している場合は、瓦礫の上でも移動しやすく、パンクの心配がないノーパンクタイヤへの交換を検討するのもひとつの選択肢です。

高齢者の防災対策で意識したいこと3つ

災害グッズ

防災グッズを揃えるだけでなく、いざというときに落ち着いて行動できるよう、日頃から以下の3つのポイントを意識しましょう。

  1. 防災食は食べ慣れたやわらかいものを選ぶ
  2. 地域の防災訓練に参加し逃げ遅れを防ぐ
  3. 非常用持ち出し袋は軽量で背負いやすいものを選ぶ

ここからは、それぞれのポイントを解説します。

ポイント1. 防災食は食べ慣れたやわらかいものを選ぶ

災害のときの食事は、体力を維持し、不安な気持ちを和らげるためにも重要です。特に高齢者の場合、嚥下(えんげ)能力の低下を考慮し、食べやすいものを選ぶ必要があります。

調理が不要で、すぐに食べられるレトルトのお粥や、やわらかく煮込んだ魚や野菜の缶詰などを備蓄しておきましょう。ほかにも、災害時だからといって特別なものを食べるのではなく、普段から食べ慣れている食品を備えておくと安心です。

また、普段からローリングストック法を実施することもおすすめします。ローリングストックとは、日常の食品を多めに買い置きし、古いものから消費してその都度新しく買い足す備蓄法です。

この方法なら、いざというときにも食べ慣れた味で安心して食事をとれます。インスタントの味噌汁やスープ、栄養補助食品などもおすすめです。

ポイント2. 地域の防災訓練に参加し逃げ遅れを防ぐ

災害時の逃げ遅れを防ぐため、積極的に訓練に参加しましょう。訓練に参加すると、実際の避難経路を歩いて確認したり、避難所の雰囲気や設備を事前に知ったりできます。

ほかにも、地域の方々と顔を合わせると、いざというときに助け合える関係性を築くきっかけにもなります。ご両親にも参加を促し、可能であれば一緒に参加してみましょう。

ポイント3. 非常用持ち出し袋は軽量で背負いやすいものを選ぶ

非常用持ち出し袋は、高齢者でも無理なく持ち運べるものを選びましょう。体力が限られているため、重すぎるリュックはかえって避難の妨げになります。

必要最低限のものを厳選し、できるだけ軽量でコンパクトにまとめるのがポイントです。リュック自体も、肩への負担が少ない、クッション性の高いベルトのものを選ぶとよいでしょう。

坂道や段差が少ない地域であれば、移動の負担が少ないキャリー型の防災バッグも選択肢のひとつです。

高齢者の命を脅かす地震火災の危険性

地震のときに発生する二次災害の中でも、特に恐ろしいのが「火災」です。自宅の防災対策を考える上で、火災への備えは決して欠かせません。

地震火災の主な原因「通電火災」とは

通電火災は、地震の揺れによって停電が起こり、その後の電力復旧のときに発生する火災です。

地震の揺れで電気ストーブや照明器具が転倒し、カーテンなどの燃えやすいものに接触した状態で電気が復旧すると、そこから発火する恐れがあります。ほかにも、損傷した電気コードに再通電することでショートし、火災につながるケースもあります。

阪神・淡路大震災や東日本大震災で発生した火災の原因の多くが、この通電火災を含む電気関係の出火でした。

通電火災を防ぐなら「感震ブレーカー」がおすすめ

通電火災を防ぐために有効なのが「感震ブレーカー」です。感震ブレーカーは、設定された震度以上の揺れを感知すると、自動的に住宅のブレーカーを落として電力供給を遮断する装置です。

避難して不在のときや、ブレーカーを操作する余裕がないときでも、通電火災のリスクを減らせます。火の始末や避難に時間がかかりがちな高齢者だけの世帯にとって、感震ブレーカーは命を守るための重要な備えです。

設置は比較的簡単で、後づけできるタイプもあります。離れて暮らすご両親への贈り物として、これ以上に安心できるものはないでしょう。電気のプロが提供する信頼性の高い製品を選び、確実な安全対策を講じることをおすすめします。

高齢者向けの防災対策は事前準備が大切

大切なご両親を災害から守るためには、防災グッズをただ送るだけでなく、ご両親の身体状況や生活環境に合わせたきめ細やかな準備が不可欠です。

自宅の安全確保から防災グッズの準備、そして地域との連携まで徹底しておけば、いざというときの安心につながります。特に、火災の危険から命を守る感震ブレーカーの設置は、離れて暮らす家族にとっても大きな安心材料となるでしょう。

災害はいつ起こるかわかりません。この記事をきっかけに、ぜひ今日からご両親と一緒に防災対策について話し合い、できることから始めてみてください。