近年、地震や豪雨などの災害が増え、被害が深刻化しています。防災の最前線に立つ皆様も、従来の対策だけでは限界があると感じているのではないでしょうか。防災テックは、このような課題を解決する方法のひとつです。
この記事では、防災事業に携わる方々に向けて、防災テックの基本的な概念や、市場で注目される背景について解説します。また、企業の先進的な取り組みや防災テックを導入するための方法についても触れています。
最前線の情報をキャッチアップし、防災事業を次のステージへ進めるヒントとしてご活用ください。
- 防災テックとは?災害から命を守る最新技術
- 従来の防災との違い
- 防災テックの4つの技術分類
- 防災テックが注目される3つの理由・背景
- 理由1. 自然災害が頻発・大きくなっている
- 理由2. 災害対応力には限界がある
- 理由3. 技術が進歩している
- 【年1回開催】防災テックスタートアップカンファレンスとは|概要と主催企業
- 主催企業・登壇企業
- イベントレポート
- 防災テックを取り入れる3つの方法
- 方法1. 防災アプリをダウンロードする
- 方法2. 防災テック機器を導入する
- 方法3. 自治体の支援制度を活用する
- 防災テックを活用する際の4つの注意点
- 注意点1. 事前に使い方を確認する
- 注意点2. 信頼できる情報を参考にする
- 注意点3. 災害時に備えて電源を準備する
- 注意点4. 定期的にメンテナンスをおこなう
- 防災テックを知って今日から備えを始めよう
防災テックとは?災害から命を守る最新技術

防災テックとは、その名の通り「防災」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。自然災害から人々の命や暮らしを守るために、AI、IoT、ドローンなどの最新技術を活用したさまざまな取り組みを指します。
地震や台風、津波などの災害に対する事前の備えや、発生時の迅速な対応を支援する技術・サービスが含まれます。たとえば、AIがSNSの投稿を解析して被害状況をいち早く把握したり、ドローンが危険なエリアの状況を調査したりするのも防災テックの一例です。
これらの技術は、災害の予兆に基づいた正確な予測や警告を出し、被害を未然に防いだり、被害の拡大を食い止めたりする助けとなります。
従来の防災との違い
防災テックと従来の防災との違いは、最新技術を取り入れているかどうかにあります。従来の防災対策が、人手や過去の経験則に頼ることが多かったのに対し、防災テックはテクノロジーを駆使する点が大きな違いです。
たとえば、災害情報の伝達は、これまでは防災無線や人手を介した伝達が中心でした。しかし、防災テックではスマートフォンアプリやSNSなどを活用し、リアルタイムでの情報伝達が可能です。
また、避難所の運営に関しても、従来は紙の台帳での受付や物資管理が一般的で、職員の大きな負担となっていました。防災テックを取り入れると、QRコードを使った受付システムや在庫管理システムの導入が可能です。運営が効率化され、被災者支援における配給ミスや待ち時間を減らすことができます。
このように、防災テックはテクノロジーを活用することで、より迅速できめ細やかな防災対応を実現します。
防災テックの4つの技術分類
防災テックは、役割によって大きく4つの技術に分類できます。
| 技術分類 | 役割 |
|---|---|
| 感知する技術 | 災害の予兆を捉える |
| 知らせる技術 | 災害の発生や危険の接近を迅速に伝える |
| 行動を促す技術 | 人々の安全な避難行動を支援する |
| 被災者を支える技術 | 災害発生後の被災者支援や復旧活動を助ける |
感知する技術は、災害が実際に発生する直前に感知することで、避難などの命を守る行動をするための時間を確保できます。たとえば、緊急地震速報システムが初期微動(P波)を検知し、大きな揺れが到達する前に警報を発するのが、この技術の一例です。
知らせる技術は、発生した災害や差し迫る危険を個人に正確かつ迅速に伝達するものです。緊急速報メールやスマートフォン用防災アプリが、現在地周辺の災害や避難場所に関する情報をプッシュ通知で配信する機能が該当します。
行動を促す技術は、感知や通知を受け取った人々が、適切かつ安全に行動できるよう支援するものです。たとえば河川の水位をリアルタイムで監視し、氾濫の危険性が高まった際に即座に警告を発するシステムなどが当てはまります。避難所の開設や混雑状況を把握できるシステムも、被災者の避難行動を支援するシステムのひとつです。
被災者を支援する技術は、災害後の被害を抑え、復旧を迅速に進めるための高度な分析・調査機能を提供します。ドローンによる被害状況の空撮や、AIを活用した浸水エリアの予測シミュレーションなどが、迅速な支援計画の策定に役立ちます。
これらの技術を連携させることで、従来の防災に比べてより迅速で正確、かつきめ細やかな対応が可能になります。
防災テックが注目される3つの理由・背景

防災テックが注目されているのは、主に次の3つの理由によるものです。
ここでは、それぞれの理由について解説します。
理由1. 自然災害が頻発・大きくなっている
近年、日本だけでなく世界中で、地震、豪雨、台風といった自然災害が頻発し、その規模も拡大傾向にあります。気候変動の影響による異常気象の増加も、この傾向に拍車をかけている一因です。
増大する災害の脅威に対し、従来の対策だけで被害を抑えるには限界があります。そこで、新しいアプローチとして、防災テックへの期待が高まっています。
理由2. 災害対応力には限界がある
災害の増加に伴い、被害も深刻化する一方で、対応する自治体や企業の力には限りがあります。災害対応には、多くの人員と膨大なコストが必要です。しかし、少子高齢化に伴う人手不足は深刻な問題です。特に地方の自治体では、専門知識を持つ職員の不足や財政的な制約などが大きな課題となっています。
限られた人員と予算の中で防災や災害支援をおこなうには、従来の人力に頼った方法では対応しきれません。
防災テックは、災害への対応を自動化・効率化できます。その結果、現場の負担を軽減し、限られたリソースをより重要な支援活動に集中させることが可能です。
理由3. 技術が進歩している
AIやドローンの進化、IoTの普及など、技術の飛躍的な進歩も防災テックが注目される背景のひとつです。
AIによる情報分析やドローンによる調査など、時間やコストを要していた作業が、技術の進歩によりスムーズにおこなえるようになりました。情報の伝達に関しても、自治体からの一方通行の発信にとどまらず、個人が能動的に情報を得ることも可能になっています。
国家主導でおこなわれてきた人工衛星の打ち上げに、民間企業が参入するようになったことで、より多くの情報が防災に活用できるようになったことも一因です。
【年1回開催】防災テックスタートアップカンファレンスとは|概要と主催企業
防災テックスタートアップカンファレンスは、災害大国である日本から世界の防災をリードすることを目指す協議会です。新しい技術とアイデアで社会課題に挑むスタートアップ企業に焦点を当てています。
2025年で5回目を迎えたこのイベントは、2024年には1,100名以上が参加するなど、業界内で大きな注目を集めています。日本の防災テックが世界をどうリードしていくのか、その最先端を体感できる貴重な機会です。
主催企業・登壇企業
ここでは、カンファレンスを牽引する主催企業である株式会社Spectee(スペクティ)と、実際に登壇して注目を集めた代表的な企業をご紹介します。
株式会社Spectee(スペクティ)|AI防災・危機管理ソリューションを提供

カンファレンスを主催する株式会社Spectee(スペクティ)が提供するのは、AIを活用した防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro」です。
| サービス | 概要 |
|---|---|
| Spectee Pro | ・SNS上の情報や気象データ、道路/河川カメラの情報などをAI解析 ・災害・危機情報をリアルタイムで提供 ・交通状況や気象データからリスクを分析・予測 |
SNSや気象データ、自動車の走行データなど、膨大な情報源をリアルタイムにAIで解析し、災害や事故のリスク情報を配信します。
特許技術を用いて誤情報を排除し、情報の正確性を担保しており、官公庁や民間企業など1,000件以上の導入実績があります。
SPACECOOL株式会社|防災の視点から見た放射冷却素材を提供

(出典:SPACECOOL株式会社公式サイト)
SPACECOOL株式会社が提供するのは、放射冷却素材「SPACECOOL」です。
| サービス | 概要 |
|---|---|
| SPACECOOL | 電気エネルギーを使わずに、直射日光下でも表面温度を外気温より下げる放射冷却素材 |
独自の光学設計によって、太陽光の反射と宇宙への熱放射という2つの機能を両立させ、直射日光下でも外気温より低い温度を実現します。電力供給が困難な避難所での熱中症対策や、食料・医薬品の保冷輸送など、災害支援において革新的な役割を果たすと期待されています。
株式会社Gaia Vision|気候変動・洪水リスク分析プラットフォームを提供

(出典:株式会社Gaia Vision公式サイト)
株式会社Gaia Visionが提供するのは、「Climate Vision」という気候変動・洪水リスク分析プラットフォームです。
| サービス | 概要 |
|---|---|
| Climate Vision | 独自のシミュレーションやAIを活用して世界中の洪水リスクを高解像度に分析・将来予測 |
独自の物理シミュレーションとAI技術を組み合わせ、世界中のあらゆる地点における洪水リスクを高精度に予測します。
株式会社Laspy|サブスク型防災備蓄BPOを提供

(出典:株式会社Laspy公式サイト)
株式会社Laspyは、サブスク型防災備蓄BPO「あんしんストック」を提供しています。
| サービス | 概要 |
|---|---|
| あんしんストック | 防災備蓄品の購入、保管、在庫・賞味期限管理、入れ替えまでをワンストップで代行 |
これは、備蓄品の選定から保管、在庫や賞味期限の管理、入れ替え作業までをワンストップで代行するサービスです。オンラインでいつでも備蓄状況を確認できるため、担当者の負担を大幅に軽減できます。
イベントレポート
防災テックスタートアップカンファレンスは、開催年ごとに重要なテーマを掲げ、時代に即した議論を展開してきました。ここでは2022年~2024年のレポートを振り返ります。
2022年
2022年は、防災テックの「リアルな今」を知ることに焦点が当てられました。内閣府の防災を担当する参事官補佐が登壇し、官民が連携するプラットフォームの重要性を訴えました。
AIを用いた危機管理や新しい形の防災備蓄サービスなど、実用段階にある具体的なソリューションが数多く提案され、防災テックの社会実装への期待が大きく高まりました。
2023年
2023年は、従来の「防災」に加えて新たに「気候」分野がテーマに追加されました。NTTデータや東京大学から専門家を招き、持続可能な未来に向けた専門性の高い議論がおこなわれました。
たとえば、AIを活用したリアルタイムでの危機管理サービスなどが紹介され、幅広い分野での技術活用の可能性が示されています。気候変動という世界共通の課題に対し、テクノロジーがどう貢献できるかを深掘りした回となりました。
2024年
2024年は「能登半島地震・気候危機から考える防災テックの現在地」をテーマに開催されました。発災直後の被災者情報の正確な把握がいかに難しいかという課題、導入された技術の現場での活用方法などが話題に上がりました。
日本の防災技術を海外へ展開していく重要性や、平時から技術を導入し、使い慣れておくことの必要性が改めて強調されています。
防災テックを取り入れる3つの方法

防災テックは、防災テックスタートアップカンファレンスで紹介されたような大がかりなシステムやサービスだけでなく、以下のように中小規模の事業者でも手軽に取り入れられるものが増えています。
ここでは、今日からでも始められる3つの方法をご紹介します。
方法1. 防災アプリをダウンロードする
最も手軽なのが、スマートフォンに防災アプリをダウンロードする方法です。災害情報を素早く受け取ることで、迅速かつ適切な避難行動を選択できます。
たとえば「Yahoo!防災速報」のようなアプリは、現在地や登録地点に応じた緊急地震速報、津波警報、避難情報などをプッシュ通知で知らせてくれます。
「東京都防災アプリ」のように自治体が独自に提供する例も増えています。地域のハザードマップを確認したり、最寄りの避難所を検索したりする機能が充実している点がメリットです。
平時のうちに災害時の行動をシミュレーションする機能を備えたアプリもあり、事前の備えに役立ちます。
方法2. 防災テック機器を導入する
家庭や事業所で導入できる防災テック機器を備えると、災害時の安全性を大きく高められます。
代表的なものとして、地震の揺れを感知して自動的にブレーカーを落とす感震ブレーカーがあります。これは、地震後に電気が復旧した際に発生する通電火災を防ぐ上で効果的です。
また、停電時にスマートフォンや情報機器の電源を確保するためのポータブル電源も欠かせません。大容量のモデルであれば、数日間にわたって通信手段や明かりを確保することも可能になります。
方法3. 自治体の支援制度を活用する
多くの自治体では、住民や事業者の防災対策を後押しするための支援制度や助成金を採用しています。支援制度を利用することで、コストを抑えた効果的な対策が可能です。
具体的な制度としては、感震ブレーカーの設置費用や、家具の転倒防止器具の購入費用の一部を補助してくれるものなどがあります。地域や事業所のある自治体のウェブサイトで、どのような支援制度があるか一度確認してみましょう。
防災テックを活用する際の4つの注意点

防災テックの効果を最大限に引き出すためには、以下の注意点があります。
ここでは、それぞれの注意点について解説します。
注意点1. 事前に使い方を確認する
防災アプリやポータブル電源など、導入したアイテムの使い方を事前に確認しておきましょう。災害が発生した際、使い方を知らなければ効果を発揮できません。
導入した防災アプリの通知設定が正しくおこなわれているか、防災機器の操作方法に不安はないかなど、平時のうちに確認しておくことが重要です。いざというときに慌てず行動できるよう、使い方を従業員と共有しておく必要もあります。
注意点2. 信頼できる情報を参考にする
災害時には、信頼できる情報を参考にすることが大前提です。不正確な情報やデマがSNSなどで拡散されるリスクは常に伴います。
ひとつの情報源だけを鵜呑みにせず、国や自治体、公的な機関が発信する公式情報を確認しましょう。複数の情報を照らし合わせて状況を総合的に判断することで、より適切な行動につながります。
注意点3. 災害時に備えて電源を準備する
多くの防災テックは電力を必要とするため、停電への備えは不可欠です。モバイルバッテリーやポータブル電源、乾電池などを常に十分に準備しておきましょう。
定期的に充電状況を確認し、いつでも使える状態に保つ習慣が重要です。
注意点4. 定期的にメンテナンスをおこなう
防災テックの機器は、定期的なメンテナンスが必要です。ポータブル電源などの機器は、いざというときに動かなければ意味がありません。定期的に充電し、動作確認をおこないましょう。
また、スマートフォンアプリは常に最新のバージョンにアップデートする必要があります。最新の状態に保つことで、性能を適切に維持し、機能を最大限に活用できます。
防災テックを知って今日から備えを始めよう
自然災害の脅威が年々高まる一方で、少子高齢化による人手不足といった社会的な課題も深刻化しています。防災テックは、従来の防災対策が抱える限界を乗り越え、より効率的で確実な安全確保を実現するための不可欠なソリューションです。
この記事で紹介した防災テックの事例やカンファレンスは、貴社のビジネスに新たな視点やヒントを与えてくれるでしょう。まずは防災アプリを導入したり、自治体の支援制度を確認したりと、身近なところから情報収集を始めてみてはいかがでしょうか。



