災害に備える

個人・家庭でできる洪水対策7選!家づくりの工夫や災害時の行動も解説

洪水対策で重要なのは、ハザードマップで自宅周辺のリスクを確認し、避難場所と安全な避難経路を家族で共有することです。非常用持ち出し袋の準備や自宅の浸水対策など、日頃からの備えも欠かせません。

この記事では、個人でできる洪水対策について解説します。また、家を浸水から守るための具体的な工夫や、災害時の行動についても触れています。

この記事を読めば洪水についての理解が深まり、具体的な対策を実行できるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

目次

対策の前に知っておきたい洪水の基本

洪水とは、大雨や雪解け水によって河川の水量が急激に増え、水が堤防を越えて河川敷などに溢れ出す現象です。さらに水量が増し、水が市街地まで流れ込んで土地や建物が浸水する状態を「氾濫」と呼びます。

氾濫も含めて洪水と呼ばれるのが一般的です。

【あわせて読みたい】洪水とは?原因から冠水・氾濫との違いや対策までわかりやすく解説

個人・家庭でできる洪水対策7選

避難所 看板

個人・ご家庭でできる洪水対策は主に以下の7つです。

  1. ハザードマップで自宅周辺のリスクを確認する
  2. 避難場所と安全な避難経路を家族で共有する
  3. 非常用持ち出し袋と備蓄品を準備・点検する
  4. 警戒レベルを知る
  5. 側溝や雨どいを掃除する
  6. 水のうを準備して設置方法を知る
  7. 火災保険の水災補償の内容を確認する

ここでは、個人や家庭でできる具体的な洪水対策について解説します。

対策1. ハザードマップで自宅周辺のリスクを確認する

最初のステップは、各自治体が公開している水害ハザードマップを確認し、地域のリスクを正確に把握することです。ハザードマップを見ると、自宅がどの程度の浸水想定区域に入っているのか、最寄りの避難場所はどこかなどの情報を視覚的に理解できます。

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」からも、全国の情報を手軽に検索できます。

対策2. 避難場所と安全な避難経路を家族で共有する

ハザードマップで避難場所を確認したら、そこへ至るための安全な避難経路を家族全員で話し合います。経路は1つだけでなく、浸水状況を想定して複数のルートを検討しておくことが重要です。

日中は、家族が別々の場所で過ごすことも珍しくありません。災害発生時に各自がどこへ避難するのか、最終的にどこで合流するのかを具体的に決めておきましょう。

実際にその道を歩いてみて、危険な箇所がないかを確認するのも有効な対策です。

対策3. 非常用持ち出し袋と備蓄品を準備・点検する

非常用持ち出し袋チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

災害発生から支援物資が届くまでの数日間を自力で乗り切るために、非常用持ち出し袋と家庭内の備蓄品は必須です。定期的に中身を確認し、消費期限が切れていないかなどを点検する習慣をつけましょう。

持ち出し袋には、飲料水、食料、携帯トイレ、救急用品、貴重品などを入れ、すぐに持ち出せる場所に保管します。

備蓄品
・食料や水(最低3日分。できれば1週間分)×家族分
・生活用品(ティッシュ、トイレットペーパー、ラップ、ゴミ袋、ポリタンク、携帯用トイレ…など)
出典:災害の「備え」チェックリスト|首相官邸

自宅で避難生活を送る場合に備えて、最低でも3日分、できれば1週間分の水や食料、カセットコンロなどを備蓄しましょう。

以下の記事では、家族構成に合わせたアイテムや、被災者のリアルな体験談から学ぶ備えのポイントも解説しています。ぜひあわせてお読みください。

【あわせて読みたい】【チェックリストつき】緊急持ち出し品で本当に必要なものは何?ほかの備えも解説

対策4. 警戒レベルを知る

警戒レベル避難方法
レベル5直ちに安全を確保する
レベル4対象地域の方は全員避難する
レベル3高齢者や障害のある方は避難を開始する
レベル2避難先や避難ルートを再確認する
レベル1最新の気象情報に注意を払う
出典:防災気象情報と警戒レベル|気象庁

適切なタイミングで安全に避難するために、国や自治体が発表する警戒レベルを正しく理解することが重要です。警戒レベルは、災害発生の危険度に応じて住民が取るべき行動を5段階で示しており、直感的に避難の判断ができます。

たとえば警戒レベル3は「高齢者等避難」、警戒レベル4は「全員避難」を意味します。大雨や台風の際はテレビやスマートフォンから情報収集し、定期的に警戒レベルをチェックしましょう。

対策5. 側溝や雨どいを掃除する

自宅周りの側溝や雨どいの掃除も洪水対策の1つです。落ち葉やゴミが詰まっていると、雨水がスムーズに流れず、自宅が浸水する原因となることがあります。

特に大雨が予想される前には自宅の周りを点検し、水の通り道を確保することが浸水のリスクを低減させます。

対策6. 水のうを準備して設置方法を知る

玄関やガレージなど、水の侵入が予想される場所には「水のう」を設置すると、被害を軽減できます。水のうは、以下のように簡単に作成可能です。

  1. ゴミ袋を二重にする
  2. 半分ほど水を入れる
  3. 空気を抜いて口を固く結ぶ
  4. 隙間なく並べる

水のうを隙間なく並べると、簡易的な防水壁の役割を果たします。段ボールなどの箱に入れて並べると、運搬が楽になり、強度も増します。

対策7. 火災保険の水災補償の内容を確認する

万が一、自宅が浸水被害に遭った場合に備え、加入中の火災保険の内容を確認するのも大切です。多くの火災保険では、水災補償を付帯させられます。

水災補償は、洪水や高潮、土砂崩れによる建物や家財の損害などをカバーするものです。ただし、補償対象や条件、支払われる保険金の額は契約内容によって異なるため、保険証券を確認して必要に応じて見直しましょう。

洪水に強い家づくりの工夫4つ

住宅建築

これから家を建てる、あるいはリフォームを検討している場合は、設計段階から水害に強い家づくりを意識することが有効です。

  1. 盛土をして床面を高くする
  2. 外壁の耐水性を高める
  3. 耐水化をおこなう
  4. コンセントや分電盤は高い位置に設置する

ここでは、洪水対策に役立つ家づくりの工夫について解説します。

工夫1. 盛土や高床式住宅で床面を高くする

基本的な対策の1つが、盛土で建物を建てる土地そのものを周囲より高くすることです。物理的に土地が高くなるため、浸水のリスクを低減できます。

また、河川の近くや沿岸部など、昔から浸水リスクのある地域では高床式住宅が見られます。高床式住宅は1階部分を駐車場や倉庫などの非居住スペースにする建て方で、居住空間を水害から守るのに効果的です。

工夫2. 外壁の耐水性を高める

建物の外壁に、水に強い素材を使用する工夫も有効です。コンクリートや防水性の高いサイディングなどを選ぶと、浸水時の建物のダメージを軽減できます。

また、建物を支える基礎部分に防水塗装を施したり、窓やドアに防水テープを貼って密閉性を高める工夫も、水の侵入を防ぎます。万が一浸水しても、耐水性が低い場合に比べて回復が早いでしょう。

工夫3. 耐水化をおこなう

地域の特性上、ある程度の浸水を避けられない場合があります。耐水化をおこなうと、浸水しても被害を最小限に抑えられます。

1階の床材や壁材に劣化しにくい素材を使用したり、寝室や書斎などの主要な居住空間を2階に配置したりする工夫が一例です。

工夫4. コンセントや分電盤は高い位置に設置する

コンセントや分電盤は、想定される浸水深よりも高い位置に設置しましょう。浸水時に電気設備が水に浸かると、漏電やショートを引き起こし、感電や火災などの二次災害につながる危険性が高いためです。

洪水発生時の行動

実際に洪水が発生、または発生する恐れがある場合、以下のステップで行動します。

  1. 情報収集する
  2. 避難準備する・高齢者等は避難開始する
  3. 避難を開始する

ここでは、時系列に沿って取るべき行動を解説します。

行動1. 情報収集する

洪水が発生したり、その恐れがあるときは、正確な情報を収集します。気象庁が発表する警報や注意報、自治体からの避難情報のチェックが重要です。

あわせて、テレビや防災アプリ、自治体のウェブサイトなどを活用し、気象情報、河川の水位、雨量の状況を確認しましょう。これらの情報も、次の行動を判断するための材料となります。

行動2. 避難準備する・高齢者等は避難開始する

自治体から「警戒レベル3 高齢者等避難」が発令されたら、移動に時間がかかる方や介助を要する方から避難を開始します。たとえば、高齢の方や障害のある方、乳幼児を連れた方が該当します。

それ以外の方は、非常用持ち出し袋の中身を確認したり、家の戸締りをおこなったりして、いつでも避難できる準備を整えましょう。

行動3. 避難を開始する

「警戒レベル4 避難指示」が発令されたら、対象地域の方は全員、速やかに避難を開始します。浸水が始まってからの避難は非常に危険です。冠水した道路では足元が見えず、側溝やマンホールに転落する危険性があります。

浸水が始まる前に、安全な場所へ移動することが原則です。すでに避難が困難な状況であれば無理に外へは出ず、自宅の2階以上など、少しでも高い場所へ移動する垂直避難を選択しましょう。

日本の洪水対策の取り組み4つ

ダム

安全な暮らしは、以下のような国や自治体による取り組みによって支えられています。

  1. ダムの建設
  2. 放水路の整備
  3. 遊水地の整備
  4. 霞堤の整備

ここでは、日本の代表的な洪水対策の取り組みを4つ紹介します。

取り組み1. ダムの建設

日本では、水害から守るために各地でダムが建設されています。

ダムの役割は、大雨が降った際に上流で水を一時的に貯め込み、下流に流れる水の量をコントロールすることです。河川の水位が急激に上昇するのを防ぎ、洪水の発生を抑制できます。

取り組み2. 放水路の整備

放水路とは、河川の水位が上昇した際に、その水の一部を海やほかの大きな川へ安全に流すために作られた人工の水路です。都市部を流れる河川の氾濫を防ぐ上で大きな効果を発揮します。

東京の荒川放水路などがその代表例で、都市の洪水リスクを大幅に低減しています。

取り組み3. 遊水地の整備

遊水地は、川が増水した際に、水を一時的に引き込んで貯留するための土地です。下流の市街地へ流れる水の量を減らし、洪水の被害を防ぎます。

遊水地の多くは、川の中流域など、比較的広い土地が確保できる場所に整備されています。普段は公園やグラウンドとして利用されている場所が、大雨の際には治水施設として機能するよう設計されているのです。

取り組み4. 霞堤の整備

霞堤は古くから伝わる日本の治水技術で、洪水時に水を安全に田畑などへ溢れさせ、下流の被害を軽減させる仕組みです。河川全体の流量をコントロールし、致命的な被害を回避する役割があります。

氾濫原が広がる河川の中下流域で見られ、堤防の一部を意図的に開けてあります。

今日からできる洪水対策をしよう

洪水対策は、ハザードマップの確認や備蓄品の準備、側溝の掃除など、日頃の備えが基本です。これから家を建てる方は、盛土や高床式住宅などの設計段階での工夫を取り入れることで、より安全な住環境を実現できます。

まずは地域のリスクを把握し、家族で防災について話し合うことから始めてみましょう。一つひとつの小さな備えが、災害時の安心や安全につながります。

これから洪水対策を始める方は、今回紹介した7つの対策を参考にしてみてください。