災害に備える

命と生活をつなぐ!断水対策の方向性とポイント

いつでも生じる断水への備え


 家庭の防災で重要な「断水対策」は万全でしょうか?蛇口をひねれば綺麗な水を無制限に使用できる、素晴らしい水道システムが存在する日本。「湯水のように使う」という慣用句が存在するほど、日常生活において「水」が使い放題であることは常識です。それだけに、ひとたび断水が発生すると、生活に大きな支障が生じます。

 人は水なしで生きることができません。飲料水が得られなければ3日で命にかかわります。他にも食事の材料として、炊事、衛生、風呂、洗濯、トイレ、あらゆる状況で水は不可欠な存在です。「断水」は災害時だけでなく、施設の老朽化や事故など、様々な原因で発生します。今回のコラムでは、断水対策のポイントについて詳しく解説いたします。



断水対策のポイント



命と生活を守る「水」の確保は、防災における最重要な事前対策のひとつ



目次

断水対策の原因と方向性

水が使えなくなる状況について

 断水対策のポイントについて解説します……、と言いながら始まったコラムですが、実は水が使えなくなる状況は「断水」に限られず、「排水」のトラブルで生じることもあります。「水」の備えをする場合は、「水道」「下水」両方に生じる影響をイメージすることが重要です。具体的には、次のような状況があり得ます。

物理的被害大地震など物理的な被害をもたらす災害で水道管が破損したり、マンションなどの建物内にある排水管が被害を受けるなどすると、水が出なくなったり流せなくなったりします。なお冬季には、水道管の凍結による破裂が原因で、水が使えなくなるケースもあります。
停電の影響マンションなどの集合住宅は、停電でポンプが止まると水も使えなくなります。また地域全体が長期停電すると、浄水場やポンプ場も動かなくなり、やはり断水につながります。
水源の被害大雨や土砂災害により浄水場の取水施設が被害を受けた場合。また火山の噴火による火山灰の降灰や、河川の汚染事故などが生じた場合、取水ができなくなり断水が生じます。
設備老朽化水道管・下水管ともに、災害などの影響とは関係なく、設備の老朽化による突発的な事故が増加しています。敷地内や建物内など、いつでもどこでも生じる恐れがあります。

 このように、水が使えなくなる状況は災害時だけとは限りません。いつ・誰もが巻きこまれる恐れのある状況として、事前対策が重要となります。

最低3日分・できれば7日分の備蓄を確保

 人が生きるために欠かせない飲料水は、どの程度の量が必要でしょうか。防災リュックなどへ入れる飲料水は「持ち運べる重さの範囲内で調整」となりますが、自宅に備蓄する飲料水は「最低3日分・できれば7日分・可能ならそれ以上」が目安となります。

 防災リュックは「すばやく逃げる」ための準備ですので、重くしすぎてはいけません。水と食料は最後に入れ、「背負った際に走れる重さ」の範囲内で調整してください。津波や火災などから走って逃げるリュックへは最低限の水を入れ、追加の備蓄品は他のバッグやスーツケースなどへ入れておき、余裕があれば持ち出すという分割も有効です。

一方、自宅に備蓄する飲料水は多いほど安心です。大規模災害が発生した場合、発災直後の3日間は人命救助や道路復旧が最優先となるため、最低3日分の飲料水の確保は必須です。また災害の規模が大きい場合は、支援の開始まで1週間ほどかかる恐れもあるため、できれば1週間分の備蓄を目標にするとよいでしょう。

1名につき「ペットボトル水の箱」を最低1箱、できれば2箱準備

1日あたりの「量」はどの程度必要でしょうか。水の備蓄に関するアドバイスでは「1名につき1日あたり3リットル」と示されます。これは明確に根拠のある数字ではなく、1日に2リットル程度の飲料水&調理用の水と、衛生管理用の水を含めておおよそ3リットルという数字になっています。

備蓄用のペットボトル水の多くは、「2リットル×6本」1箱で販売されています。分かりやすく考えると、1名につき最低この箱を1箱で3日分、できれば2箱で1週間分、可能なら3箱以上あると安心、という分量が目安になります。これで最も重要な飲料水と最低限の生活用水を確保することが基本です。

一方、家庭における平時の水利用内訳を見てみますと、飲料用の水は全体の1%程度に過ぎず、炊事、衛生、風呂、洗濯、トイレなどが水消費の大半を占めています。1名で300リットル弱、2名で500リットル強、4人家族なら1トン近い水を使用することになるのです。この量を全て「水」で準備することは難しいため、異なる方法を考える必要があります。

 飲料用や調理用の水は「水」でなければなりませんが、生活用水数百リットルを「水」で準備することは極めて困難です。そこで、断水対策の方向性としては「水そのもの」の準備と、「水以外の代用品」の準備が必要となります。

飲料水の備蓄について

 飲料水の備蓄は、災害時専用に準備する「専用備蓄」と、普段から消費しながら入れ替える「日常備蓄」のいずれか、または両方で準備します。最低限の量を専用備蓄で準備し、プラスアルファとなる量を日常備蓄で追加するのがオススメです。

災害時専用の備蓄

 長期備蓄ペットボトル水などを使用することで、災害時専用に飲料水を備蓄することができます。災害時専用の備蓄は、賞味期限ごとの入替の手間がかからないことが利点です。期限の長いペットボトル水などを準備すれば、購入時の費用はかさみますが、入替の回数を減らすことができます。手間を掛けずに備蓄を行いたい場合に便利な方法です。

長期備蓄水は一般的なペットボトル水と比較してやや高価ですが、昨今では「10年備蓄・15年備蓄」など賞味期限の長い製品が増えており、1年あたりの費用で計算した場合には、実は安価なペットボトル水よりも割安になる場合もあります。「最低3日分・できれば7日分」の最低限の水を確保するために、オススメの方法です。

 また、断水が長期化する場合は、給水ステーションや給水車などから水を受け取れる場合もあります。飲料水を運ぶための給水袋やバッグ、給水タンクなどを最小限準備しておくと安心です。折りたたみタイプのタンクとキャリーカートなどがあると、収納時に邪魔をせず保管することができます。

飲料水の日常備蓄について

 防災専用にお金をかけたくない場合は、普段から消費しつつ入れ替える「日常備蓄」で飲料水を準備します。日頃からペットボトル水を飲んだり、ウォーターサーバーなどを活用したりする場合は、そのペットボトルやサーバーのボトルを少し多めに自宅へ置き、古いものから消費することで「いずれ使うものを先に買う」だけの形を取ることができます。

 水ではなく、お茶・ジュース・炭酸水などを日頃から飲む場合も、日常備蓄で災害時の足しにすることが可能です。家族の誰かが日頃から飲むものを箱で購入し、無くなる前に補充し続けるだけで、一定の飲み物を確保することができます。管理が必要ですが、防災専用のお金は不要で、「本番」がこなくても無駄にならないことがポイントです。

断水対策のポイント

「最低3日分・できれば7日分」の最低限の飲料水は災害時専用に備蓄。それ以上の余裕を持つための飲料水は日常備蓄で用意すると確実かつ安価に備蓄できます。

飲料水の重量に関する注意

 ペットボトル水や飲み物の備蓄を行う場合には、「重量」にも注意が必要です。一般的な住宅では、建築基準法において床「1㎡」あたり「180kg」までの重さに耐えられるようになっています。タタミ1畳の面積で言えば「290kg」の重量です。

備蓄に使用するペットボトル水は、多くの製品が「2リットル×6本」入りの箱で売られています。重量は1箱で「13kg」となりますので、タタミ1畳で耐えられる290kgの飲料水の量は22箱(2リットルボトル132本)までとなります。

ラックなどを使用し、ペットボトル水を積み上げて保管する場合は、この重量に注意してください。ペットボトル水の箱で、タタミ1畳あたり22箱まで。半畳のスペースなら11箱までが、安全に備蓄できる量です。これを超える場合は床の補強などが必要となります。

飲料水の凍結に関する注意

 もうひとつの注意が「凍結」です。ペットボトル水や飲み物を、普段暖房の入っている室内で備蓄をする場合は問題となりませんが、屋外の倉庫や物置に災害専用の水を備蓄したり、クルマの中に水を積みっぱなしにしたりする場合、注意が必要です。

 ペットボトル水は氷点下の環境が続くと「凍る」場合があります。液体の水は凍ると体積が約10%増加し、容器を破裂させることがあります。特にアルミ缶のボトル水は凍結すると即座に裂けるため、保管場所には注意が必要です。

 普段生活をしている場所での備蓄であれば気にする必要はありませんが、日中の最高気温が氷点下になる地域の場合は、備蓄する場所に注意するか、凍結対応のペットボトル水などを使用するようにしてください。

生活用水の確保について

 「飲み物」の備蓄が必要な飲料水・調理水と異なり、生活用水の備蓄は必ずしも「液体」である必要はありません。普段水道の蛇口をひねることで得ている「利便」を、防災用品で置き換えることができます。

トイレの確保で命を守る

 水が使えない状況が生じた際、すぐに対応できなければ困るのがトイレです。災害直後に水や食事は不要ですし、入浴や洗濯もすぐに行えないからといって問題が生じることはありません。しかしトイレについては、タイミング次第では「すぐ」に使えなければ大問題となる可能性があります。

 また、トイレの使用が不自由な状況が長く続くと、人は飲み物や食事を控えるようになります。この状況が長期化すると体調を崩しやすくなり、特に体力面に不安のある高齢者などは「災害関連死」を招くこともあります。水が使えない状況においても、トイレを使えるようにすることは、命と生活の両方を守るために極めて重要です。

 総じて、飲料水や食料品を7日分準備するなら、トイレも7日分の用意が必要。入口と出口の量は同じにしなければならない、ということを意識してください。

備蓄トイレの種類と選び方

 備蓄トイレにはいくつかの種類があります。日頃から持ち歩く防災ポーチや、避難時に持ち出す防災リュックなどへ入れておく「携帯タイプ」のトイレ。車中泊やテント生活で使用する組み立て式の「非常用便器」がセットになったタイプ。そして在宅避難用に自宅へ備蓄する「袋」と「凝固剤」がセットになっているタイプです。

携帯タイプ防災ポーチやクルマの中、あるいは防災リュックへ入れっぱなしにするトイレです。便器なしで使用できるように工夫されていますが、目隠しになるポンチョやアルミブランケットなどをセットで用意すると役立ちます。
非常用便器便器のない場所でトイレを使用するために、段ボールやプラスチック製の組み立て便器を準備します。屋外で使用する場合は、小型のミニテントなどを用意すると使いやすくなります。介護用などに使用されることもある製品です。
袋+凝固剤自宅の「便器」に被せる袋と、液体を固める凝固剤がセットになっているトイレで、備蓄用として多く使われるタイプの製品です。50回~100回分が1箱などで売られていますので、家族1名に1箱を目安に準備をしてください。

生活用水を「道具」で準備する場合の方向性

 生活用水の準備はトイレだけでなく、炊事・衛生・風呂・洗濯などでも必要になります。炊事や衛生管理など、日常生活の中でも健康維持に直結する項目は、できるだけ道具などで代替する準備を行いたいところですが、風呂や洗濯などは即座に命にかかわるものではないので、しばらくあきらめるという選択肢もありえます。いくつかの考え方をいかにまとめます。

諦める道具で代替節水で対応移動・疎開
炊事あきらめられないため、右記の方法で対応する紙皿や紙コップを使い捨てにしたり、食器にラップを被せる少量の水で
がんばって洗う
外食できる
場所へ移動
衛生誤嚥(ごえん)性肺炎を防ぐため歯みがきだけは準備するウェットティッシュや歯みがきシートを準備するペットボトル水で手洗い・歯みがき被災地外へ移動
風呂冬場などはしばらくあきらめる長期備蓄ボディタオルやドライシャンプーを準備するアウトドア用の
シャワーや洗面器を使う
お風呂が入れる場所へ移動
洗濯着替えを駆使してしばらくあきらめる消臭スプレーなどを活用する洗濯バッグやすすぎ不要の防災洗剤などを活用する営業中のコインランドリーまで移動
トイレトイレは重要なため右記の方法で対応する備蓄トイレを準備するバケツを使ってトイレに水を流す
※排水管に問題が無いことを確認してから実施
被災地外へ移動


断水対策のポイント

 マンションなどの高層住宅では、大地震などによる建物の排水管損傷の確認が必要となる場合があります。排水管が損傷すると、上階で流したトイレなどの排水が下の階からあふれる二次被害が生じます。マンションによっては、大地震直後は水を流さないような決まりになっている場合もあるため、自宅がどうなっているかを確認してください。


終わりに

普段通りに蛇口をひねっても水が出なかった。これは災害時だけでなく、いつでもありうる困り事です。そしてその時に断水対策がなければ、本当に困った状況に陥ります。インフラの老朽化などが進み、災害時以外の断水が増えている昨今、改めてわが家の対策を見直してください。