首都直下型地震は、今後30年以内に約70%という高い確率で発生すると予測されている大規模地震です。マグニチュード7クラスの地震により、建物倒壊や火災、ライフラインの断絶など甚大な被害が予想されています。
政府は、関東地方および山梨県、長野県、静岡県を首都直下地震緊急対策区域としています。それ以外の地域が絶対に安全な県であるとはいえませんが、比較的被害を受けにくいといえるでしょう。
この記事では、首都直下型地震で影響を受けにくい県や今日から始められる6つの対策、いざというときに役立つ行動マニュアルについて解説します。
この記事を読めば、漠然とした不安が解消され、どのような対策をすれば良いか具体的な行動が見えてくるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
- 首都直下型地震は本当に来る?発生確率と被害想定
- 発生確率は70%超
- 想定される死者は最大約2万3,000人
- 首都直下型地震で安全な県・危険な県
- 首都直下型地震で安全な県
- 首都直下型地震で危険な県
- 東京都で安全な地域・危険な地域
- 安全な地域
- 危険な地域
- 首都直下型地震と南海トラフ巨大地震との違い
- 危ないのは南海トラフ巨大地震
- 発生確率が高いのは南海トラフ巨大地震
- 今すぐ始められる首都直下型地震の対策6つ
- 対策1. 家具類の固定・配置の見直しをする
- 対策2. 緊急持ち出し品・備蓄品を準備する
- 対策3. 避難経路・連絡手段を確認する
- 対策4. 安否確認方法を家族で共有する
- 対策5. ライフライン対策をしておく
- 対策6. 自宅の耐震診断を実施する
- 【シーン別】地震が起きたときに取るべき行動マニュアル
- 見落としがちな二次災害「通電火災」にも備えよう
- 火災原因の半数以上が電気だった
- 最も有効な対策は感震ブレーカー
- 安全な県に住んでいても首都直下型地震の対策は必要
首都直下型地震は本当に来る?発生確率と被害想定
首都直下型地震について、どのくらいの確率で、どのような被害が想定されているのか気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは、政府が公表しているデータを参考に解説します。
発生確率は70%超
政府の地震調査委員会の発表では、南関東でマグニチュード7クラスの地震が発生する確率は、今後30年以内で70%程度です。
この数字は、決して無視できない高い数値です。いつ発生してもおかしくないという意識を持ち、日頃から備えておくことが重要です。
想定される死者は最大約2万3,000人
| 項目 | 想定される死者数 |
| 最大 | 約1.6万人 |
| 建物倒壊等と合わせ最大 | 約2.3万人 |
内閣府では、首都直下型地震による最悪の場合の被害として、死者数は約1万6,000人にのぼると想定しています。また建物の倒壊や火災を含めた場合、最大死者数は約2万3,000人です。
この数字は、事前の対策がいかに多くの命を救うかを示唆しています。
首都直下型地震で安全な県・危険な県

日本に暮らす以上、地震のリスクを完全にゼロにすることはできません。しかし、首都直下型地震の影響を大きく受ける可能性が高い地域と、比較的影響が少ないとされる地域があるのも事実です。
ここでは「首都直下地震緊急対策区域」を基に、相対的に安全とされる県と、影響を受けやすい県について解説します。
首都直下型地震で安全な県
| 地方 | 都道府県 |
| 北海道・東北 | 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
| 北陸・甲信越 | 新潟県、富山県、石川県、福井県、岐阜県 |
| 東海 | 愛知県、三重県 |
| 近畿 | 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県 |
| 中国 | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
| 四国 | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
| 九州・沖縄 | 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |
上記の都道府県は、国の定める「首都直下地震緊急対策区域」に含まれていません。
首都中枢機能への影響が相対的に小さいと考えられますが、これらの地域でも地震への備えは依然として不可欠です。
首都直下型地震で危険な県
| 地方 | 都道府県 |
| 関東地方 | 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 |
| 中部地方 | 山梨県、長野県、静岡県 |
関東地方と中部地方の一部の県は「首都直下地震緊急対策区域」に含まれており、地震による甚大な被害が想定されています。上記の地域に住んでいる方は、特に高い防災意識が求められます。
東京都で安全な地域・危険な地域

東京都の中でも、地域によって危険度は異なります。ここでは、東京都が公表している「地域危険度測定調査」を参考に、相対的に安全な地域と危険な地域を解説します。
安全な地域
以下の地域は、23区などの地域と比較して、総合的な危険度を示す平均ランクが低い傾向にあります。
- 八王子市
- 多摩市
- 青梅市
- 町田市
- 稲城市
平均ランクとは、東京都が公表する「地域危険度測定調査」における、建物倒壊や火災の危険度を総合的に評価した指標です。数値が低いほど、相対的にリスクが低いことを意味します。
ただし、これらの地域が絶対に安全というわけではありません。首都直下型地震が発生すれば、大きな揺れやライフラインの寸断といった影響は避けられません。
危険度が比較的低い地域に住んでいる方も、日頃からの備えを怠らないようにしましょう。
危険な地域
以下は、総合的な危険度を示す平均ランクが比較的高い地域です。
- 墨田区
- 荒川区
- 台東区
- 葛飾区
- 江東区
平均ランクの高さは、建物倒壊や火災の危険性が相対的に高いことを示し、木造住宅の密集や軟弱な地盤がその要因とされています。特に荒川や隅田川沿いの地域では、より一層の注意が必要です。
上記の地域に住んでいる方は、日頃から家具の固定を徹底し、複数の避難経路を確認するなど、万全な備えを心がけましょう。
首都直下型地震と南海トラフ巨大地震との違い
首都直下型地震と並んで、今後発生が懸念されている巨大地震が「南海トラフ巨大地震」です。どちらも私たちの生活に甚大な影響を及ぼす可能性がありますが、その性質や想定される被害は異なります。
ここでは、首都直下型地震と南海トラフ巨大地震との違いについて、被害規模や発生確率の視点から比較します。
危ないのは南海トラフ巨大地震
| 比較項目 | 首都直下型地震 | 南海トラフ巨大地震 |
| 震源域 | 東京近郊 | 駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界 |
| 想定死者数 | 約1万1,000人 | 約29万8,000人 |
| 全壊・焼失 | 全壊(焼失を除く):約17万5,000棟 焼失:約41万2,000棟 | 約249万棟 |
| 津波 | 最大1m程度 | 最大30m程度 |
被害の規模という点では、広範囲にわたる巨大な津波が想定される南海トラフ巨大地震のほうが、より甚大になると考えられています。
南海トラフ巨大地震の死者数は、首都直下型地震のおよそ27倍になる計算です。津波の高さも、首都直下地震は最大1m程度の想定であるのに対し、南海トラフ巨大地震では最大30m程度になる想定です。
発生確率が高いのは南海トラフ巨大地震
| 地震 | 発生時期・確率 |
| 首都直下型地震 | 今後30年以内に70%程度 |
| 南海トラフ巨大地震 | 今後30年以内に80%程度 |
発生確率が高いのも、南海トラフ巨大地震です。首都直下型地震の発生確率が今後30年以内に約70%なのに対し、南海トラフ巨大地震は今後30年以内に約80%の確率で起こると考えられています。
今すぐ始められる首都直下型地震の対策6つ

地震の発生を止めることはできませんが、以下のような事前の対策で被害を大幅に減らせます。
ここでは、今日から始められる6つの具体的な対策を紹介します。
対策1. 家具類の固定・配置の見直しをする

まずは、自宅の家具や家電がしっかりと固定されているか確認しましょう。地震の際に室内で起きるけがの多くは、家具の転倒や落下によるものです。
背の高い本棚や食器棚は、L字金具やつっぱり棒で壁や天井に固定します。また、寝室にはできるだけ背の高い家具を置かない、出入り口を塞ぐような配置にしないなどの工夫も効果的です。
対策2. 緊急持ち出し品・備蓄品を準備する
災害発生後、ライフラインが復旧するまでの数日間を自力で乗り切るために、非常食や飲料水の備蓄は不可欠です。1人あたり最低でも3日分、できれば1週間分を用意しておくと安心です。
また、避難時にすぐに持ち出せるように緊急持ち出し袋を準備し、玄関先などわかりやすい場所に置いておきましょう。
【あわせて読みたい】【体験者の声付き】防災グッズで本当に必要なものリスト!準備のポイントや進め方も紹介
対策3. 避難経路・連絡手段を確認する
災害時に備えて、避難経路と連絡手段を事前に確認しましょう。状況によっては、がれきで道が塞がれたり、電話がつながりにくくなったりなどの想定外の事態が起こる可能性があります。
各自治体のハザードマップを参考に、自宅や職場から避難場所までのルートを複数、実際に歩いて確認する必要があります。その際、倒れそうなブロック塀やガラス張りのビルなど、危険な場所を把握するのも大切です。
対策4. 安否確認方法を家族で共有する
家族が離れ離れになった場合に備え、安否確認の方法を事前に話し合うことが重要です。災害時には電話回線が混雑し、家族と連絡が取りにくくなる可能性があります。
災害時の連絡手段には「災害用伝言ダイヤル(171)」や「災害用伝言板(web171)」が役立ちます。使い方を確認し、集合場所や連絡手順などの具体的なルールを決めておくと安心です。
【あわせて読みたい】災害時に電話がつながらない理由とは?安否確認の方法や準備すべきことも紹介
【あわせて読みたい】災害用伝言ダイヤル(171)の使い方とは?注意点もわかりやすく解説
対策5. ライフライン対策をしておく
停電に備えて、懐中電灯やランタン、モバイルバッテリーなどを準備しましょう。断水時には、給水車から水を受け取るためのポリタンクも役立ちます。
車は移動手段だけでなく、情報収集やスマートフォンの充電、プライベート空間の確保にも使える重要なライフラインです。
災害時にはガソリンスタンドが混雑したり、営業を停止したりする可能性があります。いざというときに備え、ガソリンは常に満タンに近い状態を保つよう心がけましょう。
【あわせて読みたい】停電への備えとして用意すべき7つのものとは?注意点もあわせて解説
対策6. 自宅の耐震診断を実施する
今住んでいる家が、大きな地震の揺れに耐えられるかどうかを確認することも重要な対策です。特に、1981年5月以前の旧耐震基準で建てられた建物は、耐震性が十分でない可能性があります。
多くの自治体では、無料の耐震診断や、改修工事への補助金制度を設けています。詳細を知りたい場合は、市区町村に問い合わせてみましょう。
【シーン別】地震が起きたときに取るべき行動マニュアル
| 屋内で地震が発生した場合 | |
| リビング・寝室・オフィスなど | 低い姿勢で丈夫な机の下に隠れる クッションなどで頭を守る 揺れが収まって外に出る場合は、落下物に注意し、窓際から離れる |
| キッチン | 揺れが収まってから落ち着いて火を消す 無理に火に近づかず、ものが落ちてこない場所で身を守る |
| 浴室・トイレ | ドアを開けて避難経路を確保する ガラスの飛散や転倒物に注意して落ち着いて行動する |
| スーパー・デパートなどの商業施設 | 落下物のない広い場所に移動する 店員や施設の指示に従う |
| エレベーターの中 | 無理に降りようとせず、停止するのを待つ 避難時は階段を使う |
| 屋外で地震が発生した場合 | |
| 住宅街・ビル街 | 落下から身を守るため、カバンで頭を保護する 危険物から離れる |
| 山・崖付近 | 山崩れ、崖崩れ、落石の危険があるため、すぐにその場から離れる |
| 海・川の近く | 警報を待たずに、直ちに高台や避難ビルに避難する |
| 乗り物に乗っていた場合 | |
| 自動車の運転中 | 急ブレーキは避ける ハザードランプをつけてゆっくりと道路の左側に停車する |
| 電車・バス・地下鉄の中 | 急停車に備え、つり革や手すりにしっかりつかまる 自己判断せず、乗務員の指示に従う |
上記のマニュアルを参考に、状況に応じた適切な行動を確認しておきましょう。突然の揺れに襲われたとき、パニックにならず冷静に行動することが重要です。
見落としがちな二次災害「通電火災」にも備えよう
地震の被害は揺れだけではありません。見落とされがちなのが、停電復旧時に発生する通電火災です。
通電火災とは、停電から電気が復旧する際に発生する火災のことです。地震で倒れた電気ストーブや、傷ついた電気コードなどが原因となって起こります。
火災原因の半数以上が電気だった
阪神・淡路大震災や東日本大震災では、原因が特定された建物火災の半数以上が、通電火災によるものだったといわれています。避難して誰もいない家で発生することが多く、発見が遅れ大規模な火災につながる危険性があります。
最も有効な対策は感震ブレーカー
通電火災を防ぐために最も有効な対策が、感震ブレーカーの設置です。感震ブレーカーは、設定値以上の地震の揺れを感知すると、自動的に家庭のブレーカーを落として電力供給を遮断する装置です。
感震ブレーカーがあると、電気の復旧時に起こる火災のリスクを大幅に減らせます。地域の防災対策として、設置に補助金を交付している自治体も増えています。
安全な県に住んでいても首都直下型地震の対策は必要
首都直下型地震は今後30年以内に約70%という高い確率で発生すると予測されており、決して他人事ではありません。国が指定する危険な県や、東京都内の危険度が高い地域も紹介しましたが、どこにいても地震のリスクはゼロにはなりません。
この記事で紹介した、家具の固定や備蓄品の準備といった6つの対策は、今日から始められることばかりです。また、二次災害である通電火災のリスクや、南海トラフ地震との違いを理解することも、より実効性の高い防災につながります。
この記事をきっかけに、首都直下型地震の対策をぜひ始めてみてください。


