災害のリアル

本当に動ける自信はありますか?池袋防災館で学んだ、防災のリアルとは

「災害のとき、自分は本当に動けるだろうか?」
「正しい知識はあるけど、それを現場で活かせるだろうか?」


防災に関心のある方なら、一度はこんな不安を感じたことがあるのではないでしょうか。

今回、CDエナジーの社員が東京・池袋にある防災学習施設「池袋防災館」を訪れ、地震体験・VR防災体験・初期消火体験・煙体験を体験しました。

この記事では、防災館での体験を通して得た学びや、職員へのインタビューでわかった防災の本質を社員のリアルな声とともにお届けします。

読み終えたあと、「うちの備え、大丈夫かな?」と家族や同僚に話したくなるはずです。そんなきっかけとなる一歩を、ここからはじめてみましょう。

目次

池袋防災館とは

池袋防災館は、災害に対する正しい知識と行動力を身につけてもらうことを目的として東京消防庁が運営している防災学習施設です。

地震体験や初期消火体験のほか、応急手当や映像学習、防災マップ作成(図上訓練)といった、さまざまな体験型コーナーが用意されており、個人はもちろん、修学旅行や企業研修、町会・自治会活動などの団体にも利用されています。

とくに震度7の揺れを再現できる地震シミュレータは都内随一で、映像と揺れによって家具転倒の危険性を同時に体感できます。

さらに、360度VRでは地震・火災・風水害の3種類のシナリオを体験可能。災害の臨場感を安全な環境で追体験できるため、防災教育の入り口としても高く評価されています。

施設の職員はこう語ります。「災害は避けられませんが、体験を通じて正しい対処法を知ることで、被害を最小限に抑えることができます

池袋防災館は、災害時の行動を日常生活のなかで自然に身につけるための実践的な学びの場といえるでしょう。

実録!体験レポート

CDエナジーの社員が、池袋防災館で以下4つの体験プログラムに参加しました。

ここでは、実際に2人が体験した内容と、職員から得た専門的なアドバイス、そしてその場で感じたリアルな学びを紹介していきます。

地震体験

最初に体験したのは、震度7の揺れを再現する地震シミュレーションです。

東日本大震災の実映像と音声が流れるなか、45秒間にわたって激しい横揺れが続きます。テーブルの下に潜り込んだものの、机ごと横に滑っていくような感覚に思わず声を失い、現実の地震がいかに制御不能かを痛感しました。

揺れが始まる前に、「頭や足は机の外に出さないように」と丁寧に指導を受けていました。しかし、実際に揺れが始まると、体は思うように動かず、頭や脚が自然と机の外へ出てしまう瞬間もありました。

頭で理解していたはずの行動が、いざというときに再現できないという地震の恐ろしさを実感しました。

職員の方からは「地震時はまず頭を守ることが最優先。そして、家具の固定や配置次第で生存率は大きく変わります」との説明がありました。

さらに、「正しい行動ができても、家具が倒れて出口が塞がれたら命は守れない。日常生活のなかで安全な空間をどう作るかまで想像してほしい」とも語っていただきました。

体験から自宅で地震が起きた際の対応としてお伝えできるポイントは、以下の通りです。

  • 頭は必ず机の下に完全に入れる。少しでも出ると致命的な怪我のリスクがある
  • お尻は地面につけず、膝をクッション代わりにして浮かせる。姿勢を保つ意識が重要
  • 揺れが収まるまでは絶対に動かない。飛び出すと落下物や転倒家具に巻き込まれる
  • 家庭では、寝室やリビングの家具固定、避難経路の確保を「今すぐ」見直す

なお、池袋防災館では横揺れのみの体験ですが、東京都内の本所・立川の防災館では縦揺れも体験できます。職員の方によれば、「横揺れだけでもこれだけ身動きが取れないということを、まずは体で実感してほしい」とのことでした。

ぜひ家庭や職場でも共有し、「もし今ここで地震が起きたらどうするか」を話し合ってみることから始めてみましょう。

VR防災体験

次に体験したのは、VRゴーグルを用いて、地震・火災・風水害の3つの災害を体感する「VR防災体験」です。

最初の地震シナリオでは、机の下に身を隠したものの、周囲の家具が固定されておらず、棚が倒れて出口をふさぐ様子が目前で展開。画面越しにもかかわらず、その恐怖に思わず息をのむほどでした。

火災シナリオでは、天ぷら油が発火するキッチン火災を体験。初期消火を試みようとするも「消火器の場所がわからず、水をかけてしまう」という失敗パターンが映し出され、初動対応の重要性と誤判断の危険性をリアルに学ぶ内容となっていました。

風水害シナリオでは、道路が見る間に冠水し、車や人が水にのまれていく映像が広がります。「まだ大丈夫」と思っていたのも束の間、あっという間に避難が困難になる描写からは、「早すぎる避難こそが正解」であることを強く印象づけられました。

職員の方は「VRは安全な室内で見ているので冷静でいられますが、災害を目の当たりにすると判断力が鈍る。それが現実です」と語り、「だからこそ、迷わず動ける自信を日常の準備から積み上げてほしい」と強調していました。

体験を終えた今、職場や家庭でも「災害が起きたらどうするか」を具体的にシミュレーションし、備えを可視化しておくことの大切さを改めて感じました。

初期消火体験

続いて体験したのは、訓練用消火器を使った初期消火体験です。

使用したのは、実際の火災現場でも用いられる約3リットルの水入りの訓練用消火器。持ち上げた瞬間、5〜6kgの重さと噴射時の反動に腕が震え、「この状態で冷静に操作しなければならないのか」と、現場の過酷さを実感しました。

指導を受けたうえで「燃えている物体をピンポイントで狙う」訓練に挑戦しましたが、実際には煙に向かって噴射してしまい、火を消しきれないという失敗も経験しました。炎ではなく火元を正確に見極める必要性を、身をもって学びました。

また、消火器の操作では「ピンを抜く→ホースを持つ→レバーを握る」の一連の流れを途中で止まることなく行うことが求められます。体験中は焦りから一つひとつの動作がぎこちなくなり、いかに冷静さが必要かを痛感しました。

さらに印象的だったのは、消火活動時の避難の判断基準についての指導です。消火で負傷しないためにも屋内では背中側に出口を確保しながら火元に向かい、屋外では風向きを確認し、風上から火元を狙うことが重要です。消火器の初期消火には、状況ごとに行動を切り替える柔軟さが求められると、職員の方から丁寧な解説がありました。

「火が消えない・火元が見えないと判断した場合は、すぐにその場を離れて避難する。火に立ち向かうのではなく、命を守る判断を最優先にするという意識が重要」だと強調されました。

消火活動における勇気とは、「冷静に判断し、ときには逃げる勇気を持つことこそが、本当に命を守る行動である」と学びました。

煙体験

最後に体験したのは、火災時の屋内避難を想定した「煙体験」です。

スタートと同時に誘導灯を除く照明がすべて消え、人工的な煙が一気に充満。視界はゼロに近く、わずか数秒で前後の感覚がなくなりました。頭では「これは訓練だ」とわかっていても、暗闇と煙に包まれた空間では不安と焦りが募ります。

体験の前に、避難場所への移動方法について事前に「膝を浮かせた低姿勢で進むように」と説明を受けていました。

しかし、煙で視界が遮られた状態では、無意識に姿勢が高くなってしまい、職員から即座に「姿勢が高い!」と注意を受けました。火災現場では、このような基本動作の徹底が生死を分けるのだと痛感しました。

進行ルートの途中には「ドア確認ポイント」があり、ドアに触れると熱さを感じる仕掛けが施されています。「ドアが熱い=裏が火災」という演出で、単なる知識ではなく、感覚的に「火の手が回っている可能性があるため、ここは開けてはいけない」と判断する重要性を身をもって理解しました。

避難経路のゴール地点では、参加者の人数が厳密に確認され、「戻らない・探さない・数を確認する」という避難時の原則を教わりました。実際の火災現場では、この数秒の判断が、自分だけでなく周囲の命にも直結するといいます。

職員の方からは、「煙体験はアトラクションではありません。本番では数秒の判断ミスが命取りになります。だからこそ、正しい動き方を体で覚えることが重要です」とのお話がありました。

体験から学んだ、煙の中で出口を探しながら避難する際に重要なポイントは、以下の通りです。

  • 避難時は必ず低姿勢を維持し、壁に手を添えて進む
  • 移動時に開けたドアは閉めるが、触ると熱いドアは、開けないことが鉄則。火元との隔壁の役割を果たすドアの扱い方を誤ると命に関わる
  • 火災現場では、視覚の制限があることを前提とした行動準備が不可欠
  • 避難完了後の「人数確認」は絶対に省略しない。戻って探すことは、さらなるリスクにつながる
  • 判断よりも行動が求められる火災時こそ、反復訓練の積み重ねが力になる

煙体験を通じて、自分が「正しく動けるか」を問い直す貴重な機会となりました。家族や職場でもこの体験を共有し、日常の中で正しい避難行動を話し合っておくことが、命を守る一歩になります。

体験で得た3つの気づき

池袋防災館での体験を通じて、私たちが改めて強く認識したのは、「知っている」と「できる」は、まったく別物ということです。

震度7の揺れ、VRで体験する火災や浸水、真っ暗な煙の中の避難。すべて頭では理解していたはずの知識が、いかに緊張や恐怖のなかで役に立たなくなるかを痛感させられました。

ここでは、私たちが体験から得た3つの気づきを紹介します。

体験こそ最強の防災教材

池袋防災館で体験した震度7の地震、煙による視界ゼロの状況、360度で再現される災害VR。これらのリアルなシミュレーションを通じて感じたのは、「知識だけでは体が動かない」という厳しい現実でした。

「机の下に潜る」「出口の位置を確認しておく」「煙の中では低姿勢で移動する」。こうした基本的な防災行動は、頭では理解していたつもりでも、実際の緊張感や混乱のなかでは思うように実行できません。

とくに印象的だったのは、体験のたびに職員の方々が繰り返していた「行動を体で覚えることが大切です」という言葉。防災は知識だけで完結するものではなく、それを日常の中で行動に落とし込む工夫と反復が求められます

体験を通じて得た気づきは、単なる知識では終わりません。五感と身体で感じる体験があるからこそ、「自分だったらこう動く」「この備えが足りていない」と、具体的なアクションへと落とし込むことができます。

池袋防災館でのリアルな体験は、机上の知識と行動の間にあるギャップを埋め、自分ごととして防災を考える大きなきっかけを与えてくれました。

日常の備えはマインドセット+デバイスセットの両輪

池袋防災館での一連の体験を通して、災害への備えには2つの要素が欠かせないと強く感じました。それが「マインドセット」と「デバイスセット」です。

それぞれの意味と役割は、以下の通りです。

要素意味具体例
マインドセット災害への心構え・意識の準備「自分は大丈夫」という思い込みを捨てる
「いつか」ではなく「今日起きるかもしれない」という意識で過ごす
デバイスセット道具や環境面の備え家具の転倒防止器具を設置する
懐中電灯・モバイルバッテリーの常備する
水や食料を備蓄する
ハザードマップや避難経路を確認する

たとえば、震度7の揺れを体験したときに役立ったのは、「家具が倒れても出口をふさがないように配置しておく」ことでした。VR体験では「火災時に消火器がすぐに取り出せるかどうか」が生死を分ける要素になり得ると実感しました。

また、東京都の「帰宅困難者対策条例」では、企業には3日分の備蓄の努力義務があり、従業員は安易に帰宅しない行動計画を理解する必要があります。こうした制度も、日常からの備えの一部といえるでしょう。

意識と環境、両方の準備があってこそ本番で冷静に判断し動く力が備わる」 それがこの体験から得た、最も大きな教訓のひとつでした。

共助を生む「語り合い」が防災意識を底上げする

池袋防災館での体験を通じて、印象に残ったのは、「災害時に命を救うのは、行政や消防だけでなく、ご近所同士の助け合い」という職員の方の言葉でした。

実際、東日本大震災や能登半島地震の現場でも、初動で支え合ったのは地域住民同士だったといいます。だからこそ、防災意識を高めるには、個人だけでなく、町会・自治会、企業単位での共通体験が重要です。

その点、池袋防災館では、30人単位の団体体験が可能で、災害発生時の即応連携に備えた「訓練の場」として活用されています。共通体験を通じて、平時から「災害が起きたら、誰とどう動くか」を確認し合える関係づくりができるといえるでしょう。

家族単位でも同様です。体験終了時には、職員の方より「帰宅したら家族と寝室まわりをチェックしてみましょう」と宿題が出されました。また、池袋防災館では、就寝時の地震を体験できるナイトツアーを実施しています。都内3館(池袋・本所・立川)では、防災体験ツアー参加時に配布する防災体験カードを5枚集めると「防災体験修了証」が発行されます。このように、防災体験を繰り返す仕組みがあるため、家のなかで防災を話題にするきっかけにもつながります。

また、外国人の場合は、通訳が同行すれば参加が可能です。この場合は、選択を視聴覚にしていただき、地震体験、煙体験、消火体験のほか字幕が出る防災映画をご覧いただけます。

さらに、毎月第2日曜日は、やさしい日本語の案内で体験することができます。

防災は、決して一人で完結できるものではありません。家族・職場・地域などチーム単位で語り合い、体験を共有し、助け合える関係を育てていくことこそが、本当の防災力を高めるカギになるといえます。

池袋防災館で「動ける防災」を身につけよう!

池袋防災館での体験を通じて改めて感じたのは、防災とは特別な知識を持つことではなく、日常の延長線上で確実に動ける状態をつくるという点です。

震災や火災の現場では、知識や経験の有無よりも、その瞬間にどう動けるかが生死を分ける要因となります。

池袋防災館は、その一歩を踏み出すための場所です。まずは、公式サイトから体験コースを予約してみてください。
▶ 公式サイト:防災館 | 東京消防庁 都民防災教育センター

特に注目したいのが、金曜日限定で実施されるナイトツアーです。暗闇のなかで就寝姿勢のまま地震を体験できる、非常に実践的なプログラムで、家族や同僚と一緒に体験することで、備えの視点がぐっと広がるはずです。

団体利用にも対応しており、修学旅行・企業研修・自治会イベントなど最大30名×3組までのグループ体験が可能です。

災害はいつ起きるか予測できないからこそ、いざというときに動けるためには、日頃から自分だったらどう動くかを具体的に考え、行動に落とし込んでおくことが大切です。池袋防災館での体験が、その準備の第一歩になります。是非防災館へ足を運んでみてください。