災害に備える

個人でできる土砂災害の対策!警戒レベル別の避難行動や前兆現象も解説

土砂災害の対策は、ハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認し、家族で避難場所と避難経路を共有することが基本です。避難の際は、土砂災害発生時に発表される警戒レベルに合わせて行動しましょう。警戒レベル4が発令されたら、対象地域の方は全員避難が必要です。

この記事では、個人でできる土砂災害対策を3つのステップでわかりやすく解説します。また、土砂災害の種類ごとの特徴や危険な前兆、警戒レベルに応じた避難行動についても詳しく説明します。

この記事を読めば、自宅の災害リスクを正しく理解し、今日からできる具体的な対策を始められるでしょう。ぜひ最後までお読みください。

目次

土砂災害の種類3つ|特徴と前兆現象

土砂崩れ
種類現象前兆現象
がけ崩れ急な斜面が突然崩れ落ちる・斜面にひび割れができる
・小石がパラパラ落ちてくる
・斜面から水が湧き出る
地すべり広い範囲の地面がゆっくりと動き出す・地面がひび割れ・陥没する
・池や沼の水が濁る 木が傾く
土石流谷や川の土砂が一気に下流へ押し流される・山鳴りがする
・川が急に濁り、流木が混じる
・雨が続いているのに川の水位が下がる

土砂災害は、発生形態によって主に「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」の3つに分類されます。ここでは、それぞれの災害の特徴と前兆について解説します。

種類1. がけ崩れ

がけ崩れは、雨や地震などの影響で急な斜面の土や岩が突然崩れ落ちる現象です。多くの場合、突然発生するため避難が難しく、家の近くで発生すると大きな被害を引き起こします。

がけ崩れのサインは斜面に現れ、亀裂が入ったり、パラパラと小石が落ちてきたりする現象が見られます。また、斜面から水が湧き出したり、その水が濁っていたりするのも危険な兆候です。

種類2. 土石流

土石流は、山腹や谷の土砂が長雨や集中豪雨によって崩れて水と混じり合い、猛烈な勢いで下流へと流れ下る現象です。その速度は時速20kmから40kmにも達し、巨大な岩や木々を巻き込みながら、一瞬ですべてを破壊するほどの力があります。

土石流の前兆は、山や川の異変として現れ、山全体がうなるような山鳴りが聞こえたり、腐った土のような匂いがしたりします。また、川の流れが急に濁って流木が混じり始めるのも危険なサインです。

種類3. 地すべり

地すべりは、比較的緩やかな斜面が、地下水の影響で広範囲にわたってゆっくりと滑り動く現象です。動きが遅い場合は直接的な人的被害は少ないものの、急に大きく動き出すこともあります。

地すべりの前兆として、地面に亀裂や段差ができたり、木が傾いたりすることがあります。また、井戸や沢の水が濁り始めたり、斜面から水が噴き出したりする現象も注意が必要です。

個人でできる土砂災害の対策3選

非常持出袋

個人でできる土砂災害の対策を解説します。

対策1. ハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認する

最初におこなうべきことは、自治体が公表しているハザードマップを確認することです。

ハザードマップでは、土砂災害警戒区域や浸水想定区域など、災害のリスクがある場所が色分けされています。自宅や勤務先、子どもの通学路などが危険区域に含まれていないかを確認してください。

自宅や関係先が危険区域内にある場合は、どのような種類の災害リスクがあるのかを把握しましょう。この情報を基に、安全な避難場所やそこまでの経路を事前に確認すると、迅速な避難につながります。

対策2. 非常用持ち出し袋と備蓄品を準備する

非常用持ち出し袋チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

非常用持ち出し袋には、避難時に必要な最低限の食料、水、医薬品、携帯ラジオ、懐中電灯などを入れておきましょう。

備蓄品
・食料や水(最低3日分。できれば1週間分)×家族分
・生活用品(ティッシュ、トイレットペーパー、ラップ、ゴミ袋、ポリタンク、携帯用トイレ…など)
出典:災害の「備え」チェックリスト|首相官邸

家庭での備蓄としては、最低3日分、できれば1週間分の食料や飲料水、生活必需品の用意が推奨されています。

対策3. 家族で避難場所・避難経路を共有する

万が一の場合に備えて、家族で集合場所や連絡方法を事前に話し合いましょう。このとき、家族が別々の場所で過ごしているときに災害が発生した場合を想定します。

子どもや高齢者がいるご家庭では、複数の避難経路を確認し、実際に歩いてみるのも有効です。

国や自治体が進める土砂災害対策

国や自治体も、以下のような土砂災害対策をおこなっています。

  1. 土砂災害防止法に基づく危険箇所の指定
  2. がけ崩れを防ぐ対策工事
  3. 土石流の被害を減らす対策工事

ここでは、代表的な取り組みについて紹介します。

対策1. 土砂災害防止法に基づく危険箇所の指定

ゾーンの種類危険度
土砂災害警戒区域 (イエローゾーン)住民に危害が生じるおそれがある
土砂災害特別警戒区域 (レッドゾーン)建物が壊れ、住民に著しい危害が生じるおそれがある

各都道府県では、土砂災害防止法に基づいて危険箇所を指定しています。土砂災害防止法とは、国民の生命を守るために、土砂災害の危険がある区域を明らかにし、警戒避難体制の整備や住宅開発の抑制などを定めた法律です。

この法律に基づき、危険度に応じて分けられた2つの区域がイエローゾーンとレッドゾーンです。危険区域が指定されることで、住民は自宅周辺のリスクを具体的に把握できます。

また、自治体はハザードマップの作成や避難訓練の実施などを通じて、地域全体の防災力向上を図れます。

対策2. がけ崩れを防ぐ対策工事

危険な斜面に対しては、直接的な対策工事もおこなわれます。代表的なのが、コンクリートの枠で斜面を安定させる「法枠工」や、鋼材を地中に定着させて地盤を強化する「アンカー工」などです。

これらの工事によって、がけ崩れそのものの発生リスクを大幅に低減させ、周辺住民の安全を守っています。

対策3. 土石流の被害を減らす対策工事

土石流の被害を軽減するために、渓流には「砂防堰堤」というダムのような施設が建設されます。これは、発生した土石流を受け止めて勢いを弱めたり、大きな岩や流木などを含む危険な土砂が下流へ流出するのを防いだりする役割を担っています。

土砂災害発生時の警戒レベルに応じた避難行動

警戒レベル
警戒レベル避難方法
レベル5直ちに安全を確保する
レベル4対象地域の方は全員避難する
レベル3高齢者や障害のある方は避難を開始する
レベル2避難先や避難ルートを再確認する
レベル1最新の気象情報に注意を払う
出典:防災気象情報と警戒レベルとの対応について|気象庁

大雨によって土砂災害の危険度が高まると、気象庁や自治体から5段階の「警戒レベル」が発表されます。それぞれのレベルが示す意味を理解し、適切なタイミングで避難することが重要です。

ここでは、それぞれのレベルに応じた行動について解説します。

【警戒レベル1・2】避難ルートを再確認する

警戒レベル1やレベル2が発表された段階では、最新の気象情報をこまめにチェックし、危険箇所や避難場所を再確認しましょう。ハザードマップを改めて開き、安全な経路を確認してください。

家族がそれぞれ別の場所にいる場合は、連絡を取り合って今後の行動について話し合っておくことも大切です。

【警戒レベル3】高齢者や障害のある方は避難を開始する

警戒レベル3が発令されたら、移動に時間がかかる方や介助が必要な方は危険な場所からの避難を開始します。たとえば、高齢者や障害のある方、乳幼児のいる方が該当します。

それ以外の方も、いつでも避難できるように準備を整えましょう。状況によっては自主的に避難を始めることが推奨されます。特に、夜間や早朝に大雨が予想される場合は、明るいうちに安全な場所に移動しておくことが賢明です。

【警戒レベル4】対象地域の方は全員避難する

警戒レベル4は避難指示であり、対象地域にいる全員が危険な場所から避難しなければならない段階です。発令されたら災害が発生する可能性が高いため、ためらわずに直ちに避難行動を開始しましょう。

基本的には、自治体が指定した避難場所へ移動します。浸水などで移動が危険な場合は、垂直避難で自宅の2階以上など、少しでも高い場所へ移動しましょう。

【警戒レベル5】直ちに安全を確保する

警戒レベル5は、すでに災害が発生または切迫している、最も危険な状況です。このレベルが発令された時点で安全な場所への避難が完了していることが理想です。

万が一、逃げ遅れてしまった場合は、命を守るための最善の行動を取る必要があります。無理に屋外へ避難しようとせず、今いる場所より少しでも安全な場所を目指します。たとえば建物の2階以上、がけや斜面とは反対側の部屋などに移動し、救助を待ちましょう。

台風・地震における行動チェックリスト

台風
項目チェック具体的な行動
台風接近3日前自宅・職場の危険度をハザードマップで確認する
避難場所・避難経路を家族で共有する
気象庁の台風情報や警報・注意報を確認する
台風接近前日風で飛ばされそうなものはすべて片付けるか固定する
窓・雨戸に鍵をかけて必要なら補強する
側溝・排水溝を掃除して浸水に備える
お風呂に水を貯めて生活用水を確保する
スマホ・モバイルバッテリーを充電する
防災グッズ・備蓄品を準備する
台風接近当日不要不急の外出は絶対にしない
川やがけ、海など危険な場所には絶対に近づかない
窓に近づかない
地震
項目チェック具体的な行動
安全対策家具の転倒・落下・移動防止対策は万全か
ガラス飛散防止フィルムなどケガ防止対策はしているか
寝室や子ども部屋の安全は確保できているか
家の中と外の避難経路に危険はないか
備蓄非常用持ち出し袋はすぐに持ち出せる場所にあるか
自宅に最低3日分(推奨1週間分)の食料や水の備蓄はあるか
ローリングストック法を実践できているか
家族との共有安否確認の方法や集合場所を決めているか
ハザードマップで避難場所と避難経路を確認しているか
火災対策消火器の場所と使い方を把握しているか
通電火災のリスクと対策を理解しているか
感震ブレーカーの設置を検討しているか

土砂災害は、大雨だけでなく台風や地震によって引き起こされることもあります。冷静に行動できるよう、それぞれの災害に応じたチェックリストを確認しておきましょう。

土砂災害に関するよくある質問

最後に、土砂災害に関して多くの方が抱く疑問にお答えします。

土砂災害が起こりやすい場所は?

土砂災害が起こりやすいのは、主に山間部や丘陵地、がけの近くなどです。具体的には、自治体のハザードマップで「土砂災害警戒区域」に指定されている場所は、客観的に見てリスクが高いと言えます。

ただし、警戒区域に指定されていなくても安心はできません。たとえば普段は穏やかな沢や渓流、急な斜面やがけの近くなどは、大雨や地震をきっかけに災害が発生する可能性があります。山の麓や谷の出口付近に住んでいる方は、特に注意が必要です。

土砂災害が起きたらどうすればよい?

土砂災害の前兆現象に気づいたら、ためらわずに直ちにその場を離れ、安全な場所へ避難してください。避難の際は、周囲の人にも土砂災害の前兆が起こっていることを知らせて避難を促しましょう。

避難が間に合わず土砂災害が発生した場合は、できるだけ建物の2階以上の、がけや斜面から離れた部屋へ移動します。

土砂災害から命を守るために今日から対策を始めよう

土砂災害は、いつどこで発生するかわからない災害ですが、事前の備えと正しい知識によって、リスクを減らせます。

まずは、ハザードマップで地域の危険性を確認することから始めましょう。非常用持ち出し袋の準備や、家族との避難計画の共有など、今日からできる具体的な対策を進めることが大切です。

避難の際は、土砂災害発生時に発表される警戒レベルに合わせて行動しましょう。避難に時間がかかる方は警戒レベル3で開始します。警戒レベル4が出たら、対象地域の方は全員避難を開始します。

これから対策を始める方は、ぜひこの記事で紹介したポイントを参考にしてみてください。