災害に備える

洪水とは?原因から冠水・氾濫との違いや対策までわかりやすく解説

洪水とは、河川の水量が急激に増え、堤防から水があふれ出したり、堤防が決壊したりする自然災害です。あふれ出した水は、周辺の住宅地や田畑などを水浸しにし、建物やインフラに甚大な被害をもたらすことがあります。

この記事では、洪水の意味や原因について解説します。また、氾濫や冠水などの似た用語との違いや、個人でできる対策についても触れています。

この記事を読めば、洪水とはどんな災害なのか理解し、具体的な対策がわかるでしょう。洪水の原因や対策について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

洪水とは?

洪水

洪水とは、簡単に説明すると、大雨や雪どけによって川の水量が急に増え、堤防を越えて町にあふれ出す現象です。

気象庁では、川の水かさが異常に増して、河川敷などにあふれ出すことを洪水と説明しています。

一般的には、さらに水があふれて土地や建物が水に浸かる「氾濫」が起きた状態も含めて「洪水」と呼びます。

洪水と氾濫・冠水・浸水との違い

洪水と似た用語には「氾濫」や「冠水」、「浸水」などがあります。これらは一連の現象の中で、それぞれ異なる段階や状況を表しています。大まかにいえば、大雨によって洪水や氾濫が発生し、結果として浸水や冠水が起こるという関係です。

氾濫とは、洪水で川の水が堤防を乗り越えたり、堤防そのものが壊れたりして、周辺地域に水が広がることを指します。洪水という大きな現象の中で起こる具体的な事象の1つといえます。

冠水とは、あふれ出た水によって道路や田畑といった地面が水で覆われる状態のことです。比較的浅い水深の場合に使われることが多く、「道路が冠水して通れない」のように用いられます。

浸水とは、水が家屋や建物の中にまで入り込んでくる状態のことです。被害の程度によって「床下浸水」や「床上浸水」といった言葉で表されます。

洪水が起こる2つの原因

冠水したマンホール
現象原因
外水氾濫河川の水が堤防を越えてあふれる
内水氾濫市街地の排水が追いつかずあふれる

洪水は、その発生メカニズムによって大きく2種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴を解説します。

原因1. 【外水氾濫】河川の水が堤防を越えてあふれる

外水氾濫とは、台風や集中豪雨によって河川の水量が急激に増え、水位が異常に上昇することで発生する現象です。河川の水が堤防を乗り越えたり、水の勢いで堤防そのものが壊れたりすると、あふれた水が市街地や農地に一気に流れ込みます。

外水氾濫は、広範囲にわたって甚大な被害を引き起こすことがあります。自宅の近くに川がある場合は注意が必要です。

原因2. 【内水氾濫】市街地の排水が追いつかずあふれる

内水氾濫とは、短時間に降る局地的な大雨などが原因で、市街地の排水能力を超えた場合に発生する現象です。川から離れた場所でも発生する可能性があることが、内水氾濫の特徴です。

アスファルトやコンクリートで覆われた都市部では、雨水が地面に浸透しにくいため、水が側溝や下水道に集中します。その量が排水施設の処理能力を超えると、マンホールなどから水があふれ出し、道路や建物が浸水します。

洪水災害による被害の大きさ

実際に洪水が発生すると、日々の生活に計り知れない影響を及ぼします。ここでは、過去の洪水災害の事例と浸水の深さによる被害を解説します。

日本で発生した大規模な洪水災害

基本情報令和元年東日本台風
発生時期2019年10月12日~13日
主な特徴・神奈川県箱根町で総降水量が1,000mmに達した
・1都12県に大雨特別警報が発表された
主な被害・大規模な河川氾濫、土砂災害、浸水被害が発生
・多数の死傷者と家屋の損壊
・電気、水道、交通などのライフラインが停止
出典:令和元年東日本台風(台風第19号)による大雨、暴風等|気象庁

近年で特に被害が大きかった洪水災害として、2019年10月の令和元年東日本台風が挙げられます。この台風は東日本を縦断し、広範囲に甚大な被害をもたらしました。

この災害の特徴は、記録的な大雨です。神奈川県箱根町では総降水量が1,000ミリメートルに達し、1都12県に大雨特別警報が発表される事態となりました。

この大雨によって各地で河川の氾濫や土砂災害が多発し、多数の死傷者が出たことが記録されています。ほかにも、家屋の損壊や停電、断水などライフラインにも深刻な影響が出ました。

【あわせて読みたい】台風に備えておくものチェックリスト!大切なこと・やってはいけないことも解説

浸水深ごとの被害想定

浸水深被害想定
5m以上2階建ての家は完全に水に浸かる 3階の床まで水がくる可能性がある
3~5m2階の床まで水が上がる
0.5~3m1階の床上まで水に浸かる
0~0.5m氾濫時は大人でも避難が難しい

洪水による被害の大きさは、水の深さによって大きく変わります。

一般的に、浸水深が0.5メートルを超えると大人の膝上ほどになり、流れがある場合は歩いて避難するのは困難ですこの深さでは床上浸水のリスクが非常に高くなり、家財道具や電化製品が使えなくなるなどの被害が発生します。

浸水深が3メートルを超えると1階が水に浸かり、2階の床付近まで水位が上がります。5メートル以上になると2階建ての家はほぼ完全に水に浸かり、3階建ての家は3階の床まで水が達する可能性があります。

国土交通省の「浸水ナビ」では、自宅の住所を入力するだけで浸水のリスクをシミュレーションできます。防災の一環として、家族で確認してみることをおすすめします。

個人でできる洪水対策5つ

洪水対策

個人でできる洪水対策は、以下の5つです。

  1. ハザードマップで自宅周辺のリスクを知る
  2. 非常用持ち出し袋・備蓄品を準備する
  3. 浸水対策をおこなう
  4. 警戒レベルに応じた避難方法を知る
  5. 水が引いた後の片付けと注意点を知る

ここでは、それぞれの対策を解説します。

【あわせて読みたい】個人・家庭でできる洪水対策7選!家づくりの工夫や災害時の行動も解説

対策1. ハザードマップで自宅周辺のリスクを知る

まずは、自治体が発行しているハザードマップで自宅周辺のリスクを確認しましょう。ハザードマップには、洪水の浸水予測や土砂災害の危険箇所、避難場所などの重要な情報が載っています。

家族構成に応じて、学校や保育園、勤務先など、家族が日常的に過ごす場所の確認も必要です。その上で、安全な避難場所やそこまでの避難経路を家族で話し合っておくと、いざというときに落ち着いて行動できます。

対策2. 非常用持ち出し袋・備蓄品を準備する

非常用持ち出し袋チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

避難が必要になった場合に備えて、非常用持ち出し袋と家庭での備蓄品を準備しておきましょう。避難指示が出てから慌てて準備を始めると、必要なものを忘れたり、逃げ遅れたりする危険があります。

非常用持ち出し袋の詳しい中身については、以下の記事で解説していますので、参考にしながら準備を進めましょう。

【あわせて読みたい】【チェックリストつき】緊急持ち出し品で本当に必要なものは何?ほかの備えも解説

対策3. 浸水対策をおこなう

場所項目詳細
家の外飛ばされやすいものの片付け植木鉢などを家に入れるか固定する
窓・雨戸の施錠と補強窓や雨戸を閉めて鍵をかけ、補強する
排水溝の掃除側溝などを掃除し、水はけをよくする
家の中家財の移動家財や食料品などを2階へ移動させる
生活用水の確保断水に備え、浴槽に水をためておく
玄関に土のうや水のうを置く水の侵入を防ぐ

大雨が予想される際には、家の浸水対策で被害を軽減できる場合があります。家の周りでは、植木鉢や物干し竿など、風で飛ばされそうなものは家の中に入れたり、固定したりしましょう。

側溝や排水溝が詰まっていると水の流れを妨げ、内水氾濫の原因になります。日頃から落ち葉やゴミを取り除き、水はけをよくするのが大切です。

家の中では、水に濡れると困る家具や家電を、できるだけ2階などの高い場所へ移動させます。断水に備えてお風呂に水をためておくと、トイレなどの生活用水として利用できます。

また、玄関などに土のうや水のうを置いておくと、家の中への水の侵入を防ぐのに効果的です。

対策4. 警戒レベルに応じた避難方法を知る

警戒レベル避難方法
レベル5直ちに安全を確保する
レベル4対象地域の方は全員避難する
レベル3高齢者や障がいのある方は避難を開始する
レベル2避難ルートを再確認する
レベル1最新の気象情報に注意を払う
出典:防災気象情報と警戒レベルとの対応について|気象庁

洪水のおそれがある場合、気象庁や自治体から5段階の警戒レベルが発表されます。この情報を正しく理解し、レベルに応じた行動をとることが重要です。

警戒レベル3では、高齢の方や障がいのある方、小さな子どもがいる家庭など、避難に時間がかかる方は避難を開始します。

警戒レベル4で自治体からの「避難指示」が発令された場合は、危険な場所にいるすべての人が速やかに避難を完了させる必要があります。この段階になったら「まだ大丈夫」と思わず、早めの行動を心がけましょう。

対策5. 水が引いた後の片付けと注意点を知る

ステップ詳細
1. 安全の確保ドアや窓を開けて換気し、マスク、手袋、長靴などを着用する
2. 清掃泥やゴミを取り除き、床や壁などをきれいに洗い流す
3. 乾燥扇風機などで家の中をしっかりと乾燥させる
4. 消毒家庭用塩素系漂白剤を薄め、清潔にしたい場所を拭く
5. 片付け後作業後は手洗い・うがいをする

自宅が浸水被害に遭った場合、水が引いた後の片付け作業には注意が必要です。浸水した家屋は細菌やカビが繁殖しやすくなり、感染症にかかる可能性があるためです。

作業を始める前には、ドアや窓を開けて十分に換気し、感電を防ぐために電気のブレーカーを落とします。泥の中には釘やガラス片などが混じっている可能性があるため、ケガを防ぐためにマスクや厚手のゴム手袋、長靴を必ず着用しましょう。

片付けは、まず家の中に入り込んだ泥やゴミを取り除くことから始めましょう。その後、床や壁などを水道水できれいに洗い流します。

その上でカビの発生を防ぐために重要なのが乾燥です。水洗いが終わったら、扇風機や送風機なども使い、家の中を徹底的に乾かしましょう。

最後に、家庭用塩素系漂白剤を薄めた液で、食器棚やトイレなど衛生面が気になる場所を消毒します。また、洪水後の水には雑菌が多く含まれているため、手洗いやうがいなどの感染症対策が欠かせません。

洪水とは何かを知り今日から対策を始めよう

洪水は大雨や雪どけで河川の水量が急激に増え、堤防を越えて町や周辺地域にあふれ出す現象です。氾濫や洪水が発生すると、その結果として冠水や浸水を引き起こします

洪水には、大雨で川の水があふれ出す外水氾濫と、市街地の排水が追いつかなくなる内水氾濫があります。内水氾濫の場合、川から離れていても浸水被害に遭う可能性があります。

災害から身を守るためには、まずは地域のハザードマップを確認し、自宅周辺の災害リスクを知ることが重要です。その上で、非常用持ち出し袋を準備したり、家族で避難場所や連絡方法を話し合ったりするなど、具体的な備えを進めましょう。

災害はいつ起こるかわかりません。この記事で紹介したポイントを参考に、今日からできる水害対策を始めてみてください。