災害に備える

南海トラフ地震に備えてできること7選!地震発生時の行動もわかりやすく解説

南海トラフ地震は、日本で最大級の被害が想定されている地震の1つです。停電や断水、物流の停止など、生活に大きな影響が及ぶ可能性があるため、家庭でできる備えを確認しておくことが大切です。普段の暮らしの中で無理なく取り入れられる備えをしておくと、災害時も落ち着いて行動できます。

本記事では、南海トラフ地震に備えて今すぐ実践できる7つの対策を紹介します。また、地震発生時に取るべき行動についても説明するので、地震への備えを万全にしましょう。

目次

南海トラフ地震とは?

南海トラフ地震は、今後30年以内に約80%の確率で発生すると予想されている大規模な地震です(2025年1月時点)。震源域は静岡県から宮崎県にかけての太平洋沿岸で、過去には100〜150年周期で繰り返し発生してきました。直近の地震からすでに約80年が経過しており、いつ起きてもおかしくないといわれています。

南海トラフ地震で大きな被害が想定される地域は「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定されており、政府が2025年に公表した被害想定では、最悪の場合に死者数が約29万8,000人に達するとのことです。そのため、十分な備えが求められています。

南海トラフ地震臨時情報とは?発表されたときの対応方法

南海トラフ地震臨時情報とは、地震発生の可能性が高まったと評価された際に気象庁が発表する重要な情報です。住民が防災行動をイメージしやすいように、4種類のキーワードが付けられています。

調査中想定震源域や周辺でマグニチュード6.8以上の地震や、通常と異なるゆっくりすべり(揺れを感じない地殻変動)が発生した可能性がある場合に出される情報
巨大地震警戒南海トラフ沿いの想定震源域内でモーメントマグニチュード8.0以上の巨大地震が発生したと評価された場合に発表される情報
巨大地震注意南海トラフ沿いの想定震源域内でモーメントマグニチュード7.0以上8.0未満の地震が発生した場合などに出される情報
調査終了観測された現象が巨大地震警戒や巨大地震注意に当てはまらないと評価された場合に発表される情報

ここでは、それぞれのキーワードの意味と対応方法について解説します。

調査中

「調査中」とは、想定震源域や周辺でマグニチュード6.8以上の地震や、通常と異なるゆっくりすべり(揺れを感じない地殻変動)が発生した可能性がある場合に出される情報です。この段階では巨大地震につながるかどうかは不明であり、具体的な避難行動は求められていません。

ただし、地震活動が注視されているため、引き続き最新情報に注意を払う必要があります。今後の発表によっては避難準備や行動が必要となるため、防災意識を高めて身近な備えを確認しましょう。

巨大地震警戒

巨大地震警戒」は、南海トラフ沿いの想定震源域内でモーメントマグニチュード8.0以上の巨大地震が発生したと評価された場合に発表される情報です。発表された地域では甚大な被害が起こる可能性があり、住民はすぐに避難できる準備を整えることが求められます。

臨時情報が発表された際に慌てず行動するためにも、日頃から備蓄や家族との連絡方法を確認しておくことが大切です。

巨大地震注意

「巨大地震注意」は、南海トラフ沿いの想定震源域内でモーメントマグニチュード7.0以上8.0未満の地震が発生した場合などに出される情報です。巨大地震が続けて起こる可能性もあるため、住民は備蓄や避難経路を確認し、避難できる準備をしておくことが求められます。普段通りの生活をしつつ、次に起きるかもしれない大地震に備える意識を持ちましょう。

調査終了

「調査終了」とは、観測された現象が巨大地震警戒や巨大地震注意に当てはまらないと評価された場合に発表される情報です。この段階では通常の生活を続けられますが、南海トラフ地震が発生する可能性がなくなったわけではありません。

いつ発生してもおかしくないというリスク自体は変わらないため、備蓄や避難の準備を見直す良い機会と捉えましょう。調査終了が出た際も油断せず、引き続き防災意識を高めておくことが求められます。

南海トラフ地震に備えてできること7選

避難準備

南海トラフ地震が起きたら、停電や断水、食料不足などが発生する可能性があります。ここでは、地震から命を守るためにできる具体的な備えを7つ紹介します。

  1. 食料・飲料水を備蓄する
  2. 非常持ち出し袋を用意する
  3. 家具類を固定する
  4. 家族で連絡手段を共有する
  5. ハザードマップで避難経路を確認する
  6. 感震ブレーカーを設置する
  7. 建物の耐震基準を確認する

日常生活の中で取り入れられる対策から始めていきましょう。

1. 食料・飲料水を備蓄する

災害時には物流が止まり、食料や水が手に入らなくなる可能性があるため、最低でも数日分の食料と飲料水の備蓄が必要です。飲料水は1人あたり1日3リットルが目安で、ご飯やパン、インスタント麺などの主食に加え、缶詰やレトルト食品などを用意しておきましょう。

さらに、果物の缶詰やドライフルーツなどを用意しておくと、不足しがちな栄養も補えます。普段の食材を少し多めに買い置きし、消費したら補充するローリングストックで無理なく備蓄を続けましょう。

2. 非常持ち出し袋を用意する

非常用持ち出し袋チェックリスト

チェックリストのダウンロードはこちら

避難が必要になったときのために、すぐ持ち出せる非常持ち出し袋を準備しておくことが大切です。リュックサックに衣類や懐中電灯、携帯ラジオ、充電器、救急用品などのほか、ライフスタイルに合わせて中身を調整しましょう。

用意ができたら玄関や寝室など、すぐ手に取れる場所に置いておくのが安心です。非常持ち出し袋に入れるべきアイテムについては、以下の記事も参考にしてください。

【あわせて読みたい】【チェックリストつき】緊急持ち出し品で本当に必要なものは何?ほかの備えも解説

3. 家具類を固定する

地震対策例

地震による家具の落下・転倒を防ぐために、家具類はしっかり固定しておきましょう。L字金具や突っ張り棒、粘着マットなどを活用することで、転倒リスクを大幅に減らせます。

また、家具がドアや避難経路を塞がないように、レイアウトの見直しも大切です。日頃から地震に備えた対策をしておけば、被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。

4. 家族で連絡手段を共有する

災害発生時に家族が離れていても安否確認ができるように、事前に連絡手段を決めて共有しておくことも大切です。大規模な地震では通信回線がつながりにくくなるため、電話だけでなくメールやSNSなど、複数の方法を用意しておきましょう。

通信各社が提供する「災害用伝言ダイヤル」や「災害用伝言板」の使い方も確認しておくと安心です。災害時にスムーズに連絡が取れるように、家族全員で練習しておくことをおすすめします。災害時の連絡方法については、以下の記事もあわせてご覧ください。

【あわせて読みたい】災害時の連絡手段5選!スマホ以外の方法や緊急連絡先カードも解説

5. ハザードマップで避難経路を確認する

災害時にスムーズに避難するために、ハザードマップで避難経路や避難所を事前に確認しておきましょう。災害時は冷静な判断が難しいことも多く、避難経路を把握しているかどうかで行動スピードが大きく変わります。

ハザードマップでは近隣の避難所だけでなく、自宅周辺の災害リスクもわかります。家族と一緒に確認し、避難場所や避難ルートを話し合っておきましょう。事前のシミュレーションが、命を守る行動につながります。

6. 感震ブレーカーを設置する

地震による火災を防ぐために有効なのが、感震ブレーカーの設置です。これは地震の強い揺れを感知すると自動的に電気を遮断する器具で、避難時にブレーカーを切る余裕がない場合でも火災を防げます。

実際に2011年の東日本大震災では、108件の地震火災のうち58件が電気関係の出火でした。感震ブレーカーを設置しておくことで、二次災害のリスクを大幅に減らせます。感震ブレーカーの種類や取り付け方法について、詳しく知りたい方は以下の記事で解説しています。

出典:感震ブレーカーの普及推進に関する背景・目的|総務省消防庁

【あわせて読みたい】感震ブレーカーとは?設置する必要性や種類・注意点も詳しく解説

7. 建物の耐震基準を確認する

命を守るためには、まず自宅の耐震性を確認しておくことが不可欠です。過去の大地震では、旧耐震基準の建物を中心に被害が多く報告されています。

まずは、自宅が現在の基準を満たしているかを把握し、必要に応じて専門家に改修を依頼しましょう。国土交通省が公開する「誰でもできるわが家の耐震診断」では簡単にセルフチェックが可能です。ぜひ活用して、自宅の安全性を確認してみてください。

▼誰でもできるわが家の耐震診断

https://www.kenchiku-bosai.or.jp/taishin_portal/daredemo_sp

【マニュアルつき】地震発生時に取るべき行動

屋内で地震が発生した場合
リビング・寝室・オフィスなど・低い姿勢で丈夫な机の下に隠れる
・クッションなどで頭を守る
・揺れが収まって外に出る場合は、落下物に注意し、窓際から離れる
キッチン・揺れが収まってから落ち着いて火を消す
・無理に火に近づかず、ものが落ちてこない場所で身を守る
浴室・トイレ・ドアを開けて避難経路を確保する
・鏡の破片や転倒物に注意して落ち着いて行動する
スーパー・デパートなど商業施設・落下物のない広い場所に移動する
・店員や施設の指示に従う
エレベーターの中・すべての階のボタンを押して停止するのを待つ
・降りられない場合、無理にドアを開けて降りようとせず、非常用インターホンで外部に連絡する
・避難時は階段を使う
屋外で地震が発生した場合
住宅街・ビル街・建物の外壁材・ブロック塀・看板などの落下から身を守るため、カバンで頭を保護し、危険物から離れる
山・崖付近・山崩れ、崖崩れ、落石の危険があるため、すぐにその場から離れる
海・川の近く・警報を待たずに、直ちに高台や津波避難ビルに避難する
乗り物に乗っていた場合
自動車の運転中・追突の危険があるため、急ブレーキは避ける
・ハザードランプをつけてゆっくりと道路の左側に停車する
電車・バス・地下鉄の中・急停車に備え、つり革や手すりにしっかりつかまる
・自己判断せず、乗務員の指示に従う

身の安全を守るには、発生直後から避難までの流れを事前に知っておくことが大切です。ここでは、地震発生時に取るべき行動をわかりやすく解説します。

1.自分の身を守る

地震が発生したら、まずは慌てずに自分の身を守ることが最優先です。屋内にいる場合は、丈夫な机やテーブルの下にもぐり、頭や体を守りましょう。家具の転倒やガラスの飛散から身を守るため、クッションやカバンで頭を覆うのも効果的です。

屋外にいる場合は、ブロック塀や自動販売機など倒れやすいものから離れ、周囲に注意しながらその場にしゃがみ込みます。そして揺れが収まるまで、無理に動かず安全を確保しましょう。

2.避難経路を確保する

揺れが収まったら、すぐに避難できるように出口を確保することも大切です。強い揺れでドアや窓枠がゆがみ、閉じ込められる危険があるため、揺れが落ち着いたらドアや窓を開けましょう。

特にトイレや浴室など、逃げ道が限られる場所にいる場合は、扉を開けておくことが命を守る行動につながります。避難経路を確保しておけば、余震や火災が起きた際も速やかに外へ出られます。

3.高台に避難する

津波の危険がある場合は、ただちに近くの高台や指定の避難場所へ避難してください。海沿いや川沿いで地震に遭遇した際は、津波避難タワーや避難ビルなど、より高い建物を目指しましょう。

津波は第一波だけでなく、繰り返し押し寄せるため油断は禁物です。高台や避難施設が近くにない場合は、できるだけ海や川から離れ、少しでも高い場所へ移動しましょう。

南海トラフ地震の備えに関するよくある質問

Q&A

最後に、南海トラフ地震の備えに関するよくある質問に回答します。

南海トラフ地震で想定される震度や津波の大きさについて知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。

南海トラフ地震に備えて備蓄は何日分必要?

大規模災害時には、1週間分の備蓄が望ましいとされています。最低限3日分の備蓄でも命を守る助けになりますが、支援が届くまでの時間を考えると7日分を備えておくことが必要です。

飲料水や非常食に加えて、懐中電灯や携帯トイレ、充電器なども忘れずに準備しましょう。備蓄は特別なものをそろえるのではなく、普段使っている食料や日用品を多めに用意し、使いながら入れ替えていくのがおすすめです。

南海トラフ地震の震度はどれくらい?

南海トラフ地震が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけての一部で震度7の揺れが想定されています。それ以外の地域でも震度6強・6弱、震度5強などの強い揺れが予想され、日本の広い範囲で甚大な被害が生じる可能性があります。建物被害やライフラインの停止、火災などの二次災害にも警戒が必要です。

南海トラフ地震の津波はどのくらい?

南海トラフ地震では、太平洋側の一部で最大20mを超える津波が予想されています。そのほかの地域でも10m以上の津波が到達する可能性があり、沿岸部に大きな被害をもたらす可能性があります。瀬戸内海や九州沿岸でも2mを超える津波が予想されており、津波警報が出たら速やかに高台に避難することが大切です。

南海トラフ地震に備えて、家庭でできる対策を進めよう!

南海トラフ地震は甚大な被害が想定されており、いつ発生してもおかしくない大規模地震です。災害時に自分や家族の命を守るためには、日頃からの備えが欠かせません。

食料や水の備蓄、非常持ち出し袋の準備、家具の固定など、家庭でできる対策を進めておきましょう。また、ハザードマップを活用し、家族で避難経路や避難場所を共有しておくことも大切です。今日から少しずつ備えを始めて、安心して生活できる環境を整えていきましょう。